14 ページ14
腰にある短刀を優しく擦りながら、私は山姥切の方を今度は力強い瞳で見定めた。
『そう感じられるなら、どっちでもないんですよ』と飄々とした態度を見せて、サッと他所をむく。
────知られてはいけない。
何故かそう感じて私はすぐにはぐらかすような言葉を吐くと、山姥切の眉が寄せられたのが目の端に写った。
山姥切「俺はあんたを信用しない、主には近づくな」
その言葉が私のキャッキャウフフの薔薇色本丸生活を''現実''という刃で一閃し、私の愚かしくも短い薔薇色の夢は休憩室の露と消えた。
すると突然、この何とも言えない空間を打破する者がやってきた。
油揚げが大好きで泥でできた助け舟を出した張本人であった。
こん「戻りました。 審神者さまが受け入れるとの事だったので、こちらで本丸の男士様達にもお伝えしました。 お帰りの際はお気をつけ下さい」
こんのすけは何かこの空間を感じ取ったのか、私を見て、山姥切を見て、気まずそうに言葉を羅列的に言った。
そうしてこんのすけが出ていくと同時に中学生ぐらいの女の子である主が休憩室に入ってきては、私と山姥切を何気なく見る。
子供ながらにも私と山姥切の間に何があったのか察しが着いたのか、主は私の方にやってきた。
あ、やめて────主が私の方に来ちゃったら、山姥切が……
ちらりと横目で確認すると鋭い眼光が私を今すぐ切り刻まんとし、複雑な気持ちで主の顔を見上げた。
よく主の顔を見てみると幸の薄い顔の割に快活そうな雰囲気を纏い、髪は短く運動部っぽい感じがする。
優しそうな子だな、と浸っていると目の前の口から「Aさん」と遠慮がちに呼ばれ、私は椅子からずり落ちそうになりながら、立ち上がった。
Aさん? Aさん────
今さっきまでは雷切丸さんだったのに。
こんのすけが事の次第を話したから?
普通そっちの名前で呼ばないのはこの子も知っているはずだから、多分そうなんだろうな。
山姥切「主、いまAと言ったか?」
山姥切はサッと腰を上げて、私と主の方に来ては柔らかな視線で主を見る。
しかし、その瞳には私を疑わしいと思う念が見え隠れしていて、私は少し切なくなった。
主「あっ、えっとこんのすけからそう呼んで欲しいって……言われたから」
あ、はい。
明らかに主、事情知ってますね。
私は事なげに主を見て、山姥切を見ると疑念に渦巻く目はいっそう渦を大きくしたように見えた。
105人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
5(プロフ) - マーガレットさん» コメントありがとうございます! 鶴丸、検討してみます! (2022年7月18日 20時) (レス) id: 1c6ab8c3e1 (このIDを非表示/違反報告)
マーガレット(プロフ) - とても面白かったです!続き楽しみにしてます!落ちは鶴丸がいいです! (2022年7月9日 2時) (レス) id: d2c059af4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白眉 | 作成日時:2022年6月25日 20時