手記弐拾参頁目 ページ25
貴女side
暫く二人で歩いて、あまり騒がしくない大きな川が通る橋の上に狛治さんは連れて来てくれた。
橋の縁に寄りかかって、無言で空を見上げる。
狛治さんも喋らなくて、ただ周りの人の会話や川のせせらぎの音が聞こえるだけ。
何だか、気不味いなぁ。
本当は、今すぐにでも想いを伝えてしまいたいのに。
今日は、勿論そのつもりでめかし込んで来た。
折角、恋雪ちゃんが背中を押してくれたのに何も進展なく帰れない。
出来れば良い報告をしたいが、それは狛治さんの気持ち次第。
狛「そろそろ、花火が上がる時間ですね。」
一人でうんうんと考えていると、そう狛治さんが話を切り上げた。
『そうですね……』
口の中にはあの狛治さんに頂いた林檎飴の甘さが残っていて、いつまでもこの甘さに浸っていたいと馬鹿馬鹿しげな考えが頭をよぎる。
話を狛治さんに切り出そうとした瞬間、大きな轟音が鳴って夜空に華が咲いた。
『綺麗……』
夜空に大輪の煌めく花弁を咲かせた花火は一瞬にして光の塵となって散っていく。
次々に打ち上げられる色とりどりの花火はどれも綺麗だった。
私が花火に夢中になっていると、頬をするりと狛治さんの手が滑る。
狛「Aさん、俺は花火より貴女の方が綺麗だと思います。」
頬を朱に染めて、そう狛治さんが言う。
『えっ……』
驚きの言葉に、顔に熱が集中するのが分かる。
狛「その艶めく髪も、大きくて可愛らしい瞳も潤う唇も、全て。」
狛治さんは優しげに微笑みながら、頬に滑らせていた手を一旦離し、私の両の手を掴む。
狛「俺は、初めて貴女と会った時から貴女に惹かれていたようです。」
狛治さんの口から言葉が紡ぎ出される度に私の鼓動も、花火の音も大きくなっていく。
狛「俺は誰よりも強くなって一生あなたを守ります。……どうかこれから生涯俺の隣に居てくれませんか?」
一際大きな花火が打ち上がった所で、狛治さんは私に告げた。
『はいっ!』
嬉しさで溢れる涙を拭って私は、狛治さんに精一杯の笑顔と言葉で返事を返した。
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主人公(プロフ) - まゆまゆさん» 本作品を見つけて頂きありがとうございます!私も映画見る前はそうでした笑是非ともこれからもご愛読頂けると嬉しいです(^^) (2021年3月26日 15時) (レス) id: b1a69e75f8 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - やぁ〜、猗窩座とのお話しを探して三千里(はっ?)なかなか書いてらっしゃる方居なくて、見付けたら嬉しくて善逸みたいに汚ない高音でイィヤァァァア〜状態w自分無限列車何も知らずに観に行って猗窩座の第一声で石田彰さんて解って涎垂らしそうな程で、幸せ (2021年3月26日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
主人公(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます。やっとこさ1を書き終えました。続編も近日公開致しますので是非ともこれからも応援お願い致します! (2021年3月18日 18時) (レス) id: 1c0023d245 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 初めまして!この作品大好きで、ずーっと更新をお待ちしてたので嬉しいです!!!はくじさんと早く会えますように( ; ; )最後どうなるのか気になります!! (2021年2月21日 7時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白くて大好きです!更新頑張って下さい! (2021年1月9日 5時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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