甘いのもたまには悪くない ページ33
執務室について、やっと拘束が外れるも我愛羅様は椅子に深く腰掛けて両肘を机について苛だっている様子が伺えた。
我「休憩時間を過ぎてまで何をしている夢主。」
ギン、と目の前の鋭い目線を向けられ怖じ気つき、体が萎縮したのが分かった。
『すみません……。』
謝罪の言葉を述べて頭を下げる。
我「今日はバレンタイン、という日だったな。……お前はあの男を好いているのか。」
我愛羅様から発しられた言葉に慌てて頭をあげて否定の言葉を言うも
『いいえっ……私はっ……』
我「今日のお前の仕事は終わっている。今日はあの男の所へ行けばいい。……出て行け。」
そう言うと我愛羅様は椅子を後ろに向けてしまった。
嗚呼、こんな日に貴方に嫌われてしまうなんて……。手提げの中に一つだけ残るラッピングされた袋を見て虚しくなり、執務室を飛び出した。
執務室を飛び出したすぐ後に誰かとぶつかってしまった。
手提げの中身が転がっていく。それを慌てて拾い、ぶつかって倒れてしまった人に手を差し伸べた。
『すみません……周りを見ていないせいで……。』
テ「夢主？？」
私がぶつかった人はテマリ様で、驚いた顔をしながら私の手に掴まり立ち上がった。
『すみませんでした……テマリ様。』
直ぐにその場を去ろうとするも、テマリ様の手が私の腕を掴みこの場を離れることは叶わなかった。
テ「何故、夢主……お前は泣いているんだ。」
そう言われ、頬に手をやると濡れているのに気付いた。いつの間にか私は涙を流していたのだ。
『えっと……それは……。』
私が、言い辛そうにしていると手提げに目をやった。
テ「それは何だ？」
恐る恐る砂で少し汚れてしまった袋をテマリ様の方へと差し出す。
テ「コレ……まさかっ……！」
テマリ様とは仲良くさせてもらっていて、いつの間にか私が我愛羅様へ寄せる気持ちを知っていて相談に乗ってもらったりしていたのだ。
このラッピングされた袋を見て、テマリ様はコレが我愛羅様への物だと気付いた様だった。
『私は我愛羅様に嫌われてしまった様です……。テマリ様、ごめんなさい……。』
後ろから聞こえるテマリ様の制止の声を聞かぬ振りをしてただひたすら走った。
今直ぐにでもここから離れて、フウカの所へこの気持ちを吐き出したかった。
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