隣国の王子様 ページ13
yourside
『っ……うぅ…今何時……』
昨日はあのまま風呂に入って、ベッドに倒れるようにして深く眠った。自然と目が冷めて布団から顔を出して時計を覗き込むとまだ早朝の4時だった。
布団の中で足を抱えてぎゅっと丸くなる。今日の朝、我愛羅さんは砂隠れの里へ帰ってしまうのだ。
本当は、お別れはあんな悲しい別れ方じゃなくてせめてもっと良い別れ方をしたかった。後にすべてが良い思い出だった、と言えるような。
なんだか悲しくなってきてしまい、涙で視界がぼやけてくる。
『好き、だったなぁ……。』
我愛羅さんと過ごした1日は思ったより私の心に影響をもたらしていて、初めて失恋を味わったような気持ちになった。
目を瞑っても瞼の裏に出てくるのは我愛羅さんで、私の口からでる嗚咽も止まらなくなっていた。
もう、全て忘れてしまおうか。我愛羅さんへの気持ちを。そうしてしまえば楽になる気が自然とした。
我愛羅さんと過ごした昨日の出来事と、我愛羅さんに対して抱いていた気持ちを忘れて寝てしまおう。そう思った時、私の脳裏に声が響いた。
"諦めていいの？"
"もう、会えなくなるかもしれないよ？"
"会いに行きなよ！"
きっとそれらの声は私の心の奥底にある言葉で、本当はやっぱり、我愛羅さんを、我愛羅さんへの気持ちを忘れることなんて私には出来なかった。
ベッドから跳ね起きて、いつも通りの忍服に着替えて上忍のベストを着用する。木ノ葉の額宛てを身につけてサンダルを履いて、窓から飛び出した。
まだ日は出ていない。きっと、間に合う。建物の屋根部分を飛んで木ノ葉の里の玄関口へと急ぐ。
『お願い、間に合って……！』
やっぱりあんな別れ方じゃきっと後悔しか残らない。最後にどんな結果でも良いから、それが辛くなってしまう結果でも伝えないよりかは胸がきっと傷まないから。どうか間に合って。
『ハァッ……私は、我愛羅さんに伝えてないッ……ほんとの気持ちを……！』
門の近くになってきてよく見てみると、門の前に特徴的な赤い髪に、背に大きな瓢箪を背負っている我愛羅さん達が居た。
『我愛羅さんっ！』
気付いて……！
これが最後かもしれないの！
まるでスローモーションになったかのように。
我愛羅さんが振り返る。
その表情は驚きを含んでいて。
我「夢主……か？」
嗚呼、名前をよんで貰えただけでこんなにも胸が高鳴るなんて。
私はよっぽど我愛羅さんに惚れ込んでしまったようだ。
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