【HQ】ザル女。【黒尾鉄朗】 (ページ1)

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「黒尾さんってぇ、スポーツとかやってるんですかぁ？」

妙にけばけばしい胸元開きすぎな女が、俺の腕に胸を当ててくる。
無駄に育ってるその胸はたゆんたゆん、とバウンドした。
香水の匂いに顔を顰めながら、バレーやってます、と答えた。

大学に入って半年弱。
やっと大学のバレーサークルに馴染んできて、試合に出れる数も着々と増えてきた。
そんなおれ、黒尾鉄朗、ただいま合コンに参加してます。

人数は男4人、女4人で男で飲みに行くような居酒屋ではなく、オシャレな呑み処で。
頼むものは軟骨と唐揚げとかでもなく、シーザーサラダやスモークサーモンなどやけにお上品なものばかり。

…友人のお願いで来たが、正直もう帰りたい。

だからこんな逞しいんですねぇ、と俺の腕を触り始める女。やめろ、と振りほどきたい気持ちを抑えて愛想笑いした。
ほかの面々も出来上がってきていて、おしゃれな空気に酔いしれて距離感が掴めないやつが多々。

俺は、今日早めに切り上げて、1人で飲み直して帰りたいなんて思ってた。

すると、一人の女が手を挙げていう。

「私、帰ります。」

長い黒髪をひとつに縛ったキレイめな女で、悪くいえば少しきつそうな顔立ちだった。
狙ってたやつが多かったのか、ええ、と
ブーイングがわきおこる。

どうしても用事があって…と苦笑いをすると、これお金、と近くの女の子に渡していた。

場の空気に酔わす、自分だけ颯爽と出てく姿に惚れ惚れした。

…俺も、出てくかな。

「じゃ、俺も。」

実は課題終わってなかったり、と笑うと俺の腕を組んでた女がええー！と言った。
お持ち帰りされる予定だったらしく、足をもじもししてくる。

彼女を見習って、お金これな、とその女の前にばん、と置く。

ハンガーにかけてたコートを掴んで、おい！と叫ぶ友人を他所に俺は1軒の居酒屋へ向かった。

居酒屋、「猫天」。
大学に行かずに親の呑み処を継いだ海が店主のお店だ。
あんなあそこの甘い酒飲んでやってられっか、と暖簾をくぐる。

いらっしゃい、といつもの海の声…と、

「っあ！！」

そこには、大ジョッキに軟骨を摘むあのきつい女がいた。