自販機事件【北信介】

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治side


初めて見たときは、単純にちっちゃくて可愛ええ女子やなって思った。北さんのあないな顔見るの初めてやったし、こいつ何もんやって興味もあったかもしれん。でもそれが一目惚れっちゅーのに気づいたんは最近や。




一目惚れってほんまにあるんやなぁ…



「おいサム！なにボケーッとしとんねん！今俺の話聞いとったか？！！」




「すまん、全然聞いとらんかったわ」



「なんっっっでやねん！！！！！！」



ツムの話は基本聞き流すし、大体のことは記憶に残らん。でも、1回だけ、聞き流せん話があった。あのちっちゃい女の子の話。ツムがあの子の話をしとる時は真面目に聞いた。名前は山田Aちゃんいうんやて。よう似おうてるなと思った。それからというものの、Aちゃんの事が頭から離れんくなった。







「あ！北先輩！！！！」



「おう、山田か。また差し入れ持ってきてくれたん？ありがとさん」




北さんがAちゃんと話しとるとき、嫉妬した。何年ぶりにこんな嫉妬したんやろってくらい、嫉妬した。もちろん表には出さんし、前から北さんに差し入れ持ってきとるんは知っとったけど直接そのやり取りを見ると、なんで北さんなん？なんで俺じゃないん？ってそんな感情ばっかが俺を占領して苦しくなった。




「はぁ〜……」



次の日、俺はその感情に苦しめられながら廊下を歩いていた。はよ部活に行かなツムがうるさいからな。俺の気持ちはずっと晴れなかった。数秒後にあの子と会うまでは。





「わっ！ごめんなさいっ！！」




あぁ、Aちゃんとぶつかるとかなんてラッキーなんやろ。話すきっかけできてしもた。こんなん話さん方が無理や。



名前とか知らんフリしたけど本当は知っとる。Aちゃんのこと誰よりも知りたかったから。ツムの話とか、なんもおもろない話しとんのに真剣に聞いてくれて相槌うってくれる。可愛すぎんかこの子。

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