【７月 � � ページ22
side 桃
一度学校に行ってから、阿部ちゃんは、
学校の話題を口にすることがなくなった。
俺たちも、うかつに聞けなくて、
しばらく様子を見ていたんだけど。
やっぱり心配になっちゃって。
こっそり、阿部ちゃんとお話することにした。
佐久間「さあ、どうぞ。座って座って」
阿部「うん、さっくんのお部屋、すごいね」
俺の部屋に入るのは初めてじゃないんだけど、
来るたびに、阿部ちゃんは珍しそうにする。
壁や天井に貼っているポスターを見回して。
阿部「今は、どの子がお気に入りなの？」
そんなこと聞かれたら、ついつい語ってしまう。
佐久間「はっ、今日は、その話じゃなくて！」
ふと我に返って、２人で腰を下ろして。
きっと、阿部ちゃんは泣いちゃうだろうな、
と思って、先にティッシュも持ってきておく。
阿部「わー、ティッシュの箱も、かわいい……」
箱に描かれている女の子をなでていたけど、
クシャリと顔が崩れて、目に涙が溜まる。
佐久間「阿部ちゃん？」
阿部「分かってるもん、何の話、したいのか」
早速出番になったティッシュを引き抜いて渡す。
阿部「みんなが気にしてるのも、
俺に言わないでくれてるのも、 分かってる」
佐久間「そっか、 気づいてたんだね」
ティッシュで目元を覆って、俯いてしまって。
しばらく、泣き声だけが部屋に響いていた。
佐久間「阿部ちゃんが思ってること、
佐久間さんに、教えてほしいな」
ようやく涙が落ち着いたころ、
まだ顔を上げてくれない阿部ちゃんに声をかける。
阿部「……ひーくんには内緒ね」
佐久間「うん、もちろん、言わないよ」
そう約束して、それでも、ためらっていたけど。
ポツリポツリと教えてくれたこと。
この間、たった１０分、行っただけなのに、
帰ってきたら、すごく疲れていて。
毎日、朝から夕方まで学校で過ごすなんて、
頑張っても無理なんじゃないかと。
だったら、照に迷惑かけてまで、
頑張る意味って何だろうって思ったんだって。
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作者名：アクモ | 作成日時：2023年2月1日 20時
