【６月 �◆� ページ18
side 黄
テストも一応、行くことができて。
その後も何度か、夕方、一緒に学校に行って。
亮平の中で、少しずつ自信がついてきたようで。
それと、テストの結果もきっかけになって。
俺たちからしたら、十分に良い点数で、
みんな、めちゃくちゃ褒めたんだけど。
亮平は、少し納得のいかない点数だったみたい。
だから、授業を受けたいって気持ちも出てきたのかな。
学校に行くことに対して、前向きに考えているような、
そんな雰囲気は感じていたんだけど。
今日、とうとう……。
阿部「あのね、ひーくん、えっとね」
真剣な顔で話しかけられたから、俺もじっと待つ。
阿部「明日、ちょっとだけ、学校行こうかな」
岩本「ホント？行こ行こ！」
つい、喜んで笑顔になった俺とは対照的に、
亮平は泣き顔になる。
阿部「うー、言っちゃったぁ……」
岩本「なんで泣くの」
目に浮かぶ涙を拭って、抱きしめる。
阿部「だって、行けないかもしれないし」
岩本「俺は、行こうかなって思ってくれた、
その気持ちが嬉しいんだよ」
だって、亮平がそんな気持ちになってくれたの、
この家に来てから初めてだったから。
岩本「だから、行けなくても大丈夫」
俺の気持ちが伝わるように、もう一度、
ギュッと強く抱きしめて。
涙が止まらない亮平の背中を、しばらく、さすっていた。
夜になって、亮平は、すでに緊張しているみたい。
布団に入っても、なかなか寝付けないのか、
何度も寝返りを打つ音がする。
阿部「ひーくん、起きてる？」
岩本「起きてるよ、どうした？」
布団の上に起き上がって、不安そうな顔。
岩本「眠れない？」
阿部「うん、お薬、飲んじゃダメかな」
岩本「いいよ、一緒に行こうか」
眠れないのは辛いだろうから、
病院からもらっている薬を飲ませて。
戻ってきたら、俺の布団に一緒に横になる。
暑い季節なのに、手足は氷のように冷たくて、
そのせいで眠れないのもあるかなと思って。
足元には、俺のタオルケットも掛けて、
手は、温まるように握りしめて。
ゆっくり背中をさすっているうちに、
ようやく眠れたみたいで、ホッとした。
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作者名：アクモ | 作成日時：2023年2月1日 20時
