【５月 白】 ページ14
side 黒
ラウ「ふっかさん、今日、ちょっと調子悪くて」
深澤「うん、分かった」
いつもより顔色が悪いラウールが、
起きてくるなり、ふっかさんに話していた。
ラウ「ごめんなさい」
深澤「大丈夫、大丈夫。
今日は、ゆっくりしてな」
ペコリと頭を下げたラウール。
ふっかさんが、こっちを向いて、手招きする。
深澤「目黒、ラウールのこと、よろしくな」
目黒「はい、分かりました」
ふっかさんに託されたラウールを連れて、
ラウールの部屋へ。
ラウ「めめ、ごめんね」
布団に横にさせると、だるそうに目を閉じる。
目黒「今日は、どこが調子悪い？」
ラウ「……頭、痛くて、気持ち悪い」
触った感じ、熱はなさそうだし、
タオルを握らせて、ゆっくり背中をさする。
部屋を見回すと、机の上が散らかっていて。
本や筆記用具が散乱しているみたい。
目黒「ラウール、ちゃんと寝てる？」
ラウ「あんまり。レポートが終わらなくて」
働きながら、通信制大学にも籍を置いているラウール。
ラウールも、まあ、これまでいろいろあって。
出席日数ギリギリだけど、無事高校を卒業したところ。
通信制大学っていうのが、どういうものなのか、
俺たちもよく分かっていないんだけど。
課題とかレポートとかが多くて大変そう。
仕事より、大学の課題を優先していいよって、
みんなで言っているんだけど。
ラウールは仕事が終わった後や、休みの日にしか、
課題をやらないって決めているみたいで。
あんまり口出しされるのも嫌かと思って、
様子を見ていたんだけど。
とうとう、寝不足で体調が悪くなったみたい。
目黒「なんで、そんなに無理するの？」
ラウ「……阿部ちゃんが、ね」
苦しそうに、眉間にシワを寄せて、教えてくれた。
ラウ「阿部ちゃんが、頑張ってるから。
俺も頑張らなきゃって思って」
目黒「うん」
ラウ「でも、結局、こんなになっちゃって、
めめにも迷惑かけてるね、ごめんなさい」
頑張るのは悪いことじゃないけど、
人と比べる必要はないと思うし。
ラウールだけじゃなくて、阿部ちゃんもだと思うけど、
自分のペースで頑張ることを覚えてくれたらいいな。
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作者名：アクモ | 作成日時：2023年2月1日 20時
