【５月 �◆� ページ11
side 黄
テストがあると聞いた亮平は、
やっぱり、『行きたい』って言ったから。
中間テストを学校で受けることを目標に、
少しずつ学校に慣れていくことになった。
まずは、 入学式の日以来、袖を通していない
制服に慣れてもらおうと思って。
事務所で勉強するときも、制服を着るようにした。
制服にも苦手意識があったみたいだけど、
学校に行かなくていいと分かると、
思ったより、すんなり着ることができて。
最初は、制服に着られている感じで、
表情も動きもぎこちなかったけど。
みんなが『かっこいいね』って褒めてくれたり、
一緒に写真を撮ってくれたりしたおかげか。
だんだんと、自然に過ごせるようになった。
それから、テストには行きたいんだけど、
まだ学校に入ったことすらない亮平だから。
心配なことがたくさんあるみたいで、
俺にも、いろいろ聞いてくるんだけど。
俺も、何も分からないから、答えられなくて。
岩本「また、一緒に学校行こうよ」
もしかしたら、実際にテストを受ける教室を、
見せてもらえるかもしれないし。
そう誘って、一緒に行くことになった。
何度か一緒に行って、少しは慣れてもらわないと、
テストの日に、いきなり行けるようにならないだろうし。
また、佐久間にもついてきてもらって、
手を握ってもらって、後部座席に座っていて。
学校に到着したところまでは、前と同じで。
でも、今回は、佐久間に手を引かれて、車から降りて。
降りてからは、俺の腕にしがみついて、
俯いて、周りを見ないようにしていたけど。
佐久間が、自然に背中を押して歩いてくれて、
なんと、学校に入ることもできた。
いきなりすぎて、ビックリしたけど、嬉しくて。
俺は、にじんでくる涙を隠すのに必死で、
頭をなでてあげることしかできなくて。
その分、 佐久間がめちゃくちゃ褒めてくれていた。
出迎えてくれた先生の姿を見ると、
怖くなってしまったのか、俺の後ろに隠れてしまって。
さっきまでも結構な力でしがみついていたけど、
その力がもっと強くなって。
少しでも不安を逃がそうと必死なんだって、
その腕から伝わってきた。
後ろでは、佐久間が『大丈夫だよ』って言いながら、
亮平の背中をさすってくれている。
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作者名：アクモ | 作成日時：2023年2月1日 20時
