【４月 � � ページ1
side 黄
深澤「あれ、入学式、明日だっけ？」
ふと、カレンダーを見上げたふっかに聞かれた。
岩本「あー、うん、そうなんだよな」
深澤「阿部ちゃん、行くの？」
俺らの視線の先には、ソファでテレビを見ている亮平。
岩本「どうなんだろ。まだ聞いてない」
亮平は俺の従兄弟で、今度、高校生になる。
事情があって、家族と離れて暮らすことになって、
俺がシェアハウスしているところに一緒に住んでいる。
実は、亮平、中学校にほとんど通えていなくて。
高校も通信制にしようと考えていたみたい。
でも、俺は亮平に、外の世界を知ってほしくて。
社会に出たら、外の人と関係を持たないといけないし、
今のうちに、俺たち以外とも接する機会を作りたかった。
家から一番近い高校が、不登校に理解がある学校だったから。
そこに行ってみないかって、亮平を説得して。
元々頭のいい亮平だから、入学試験も合格して。
その入学式が明日、ってわけ。
学校には、この間、俺だけ行って、
いろいろ相談してきたところだし。
亮平のペースで頑張ろうって約束もしているんだけど。
まあ、本人の気持ちが一番だよな。
岩本「亮平？明日の入学式、どうする？」
隣に座って、さりげなく聞いたつもりだけど、
聞かれた亮平は、キョロキョロと視線をさまよわせて。
阿部「行きたくはない、けど……。
でも、頑張るって決めたし……」
呟いて、俯いて、しばらく悩んで。
阿部「ひーくんは、行ってほしい？」
そんな、答えに困る質問を投げてきた。
岩本「そうだなぁ、頑張れそうなら、
行けるところまででいいから、行ってほしいよ」
俺の返事に、パッと顔を上げて、泣きそうな顔。
それでも、もう一度俯いて、 考えた答えは。
阿部「分かった、行く」
岩本「うん、無理しないでいいからな」
少しでも安心できればと思って頭をなでるけど、
ポロポロと涙がこぼれて。
今からこんな調子だと、明日が心配になった。
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作者名：アクモ | 作成日時：2023年2月1日 20時
