31−３ ページ10
１時間ほどで、起きてきた佐久間。
あれだけ泣いたんだから当たり前だけど、
目が腫れていて、いつもより俯き加減だ。
真っ先に駆け寄ったのは、やっぱり阿部ちゃん。
佐久間をすっぽりと腕の中に収めて、抱きしめる。
佐久間の目には、またウルウルと涙が浮かぶけど、
零れる寸前で、慌てて拭って。
気が済んだ阿部ちゃんが腕をほどくと、
その腕を引っ張って、自分たちの席に着いた。
周りからの様子を伺う視線にも気づいたのか。
佐久間「心配かけて、ごめんなさい」
そう、ペコリと頭を下げる。
しばらく様子見だな、とそれぞれ仕事に戻る。
異変を感じたのは、それからすぐだった。
仕事をしているふりをしつつ、佐久間の様子を見ていたけど、
明らかに様子がおかしい。
手元の書類を見ているはずなのに、いつの間にか、
ぼんやりとした目をしていて、動きが止まっている。
誰かの話し声がすると、ハッと気を取り直すけど。
今度は涙が出てきたのか、俯いて目をこすって。
仕事どころではなさそうなので、休ませようと思っていると。
プルルルル……
電話が鳴り始めた途端、ビクリと肩を揺らして、
みるみるうちに顔色が悪くなっていく。
それも運悪く、阿部ちゃんの電話だったから、
電話を取った阿部ちゃんは、佐久間に声をかけられなくて。
俺が、急いで佐久間のところに行こうとしたけど、
それより早く、耳を強くふさいで、机に伏せてしまった。
深澤「佐久間、どうした？」
隣で電話をしているので、大きな声を出すわけにいかず、
肩に手を置いてそっと聞くけど、首を横に振られる。
佐久間「はぁ、ごめん」
電話が終わるころには、少し落ち着いた様子の佐久間。
深澤「どうしたの？急に？」
佐久間「うん、なんか電話の音がしたら、
耳がキーンってなって、気持ち悪くなって」
まだ気分が悪いのか、胸のあたりをさすっている。
佐久間「ビックリした。なんだったんだろ」
顔色も悪いし、心配そうっていうか、不安そうな顔だし。
深澤「佐久間、今日はもう、お仕事いいよ」
さっきからの様子を見ていると、無理はさせられない。
後のことは照にお願いして、一緒に家に戻った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 594人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アクモ(プロフ) - くろさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。とても嬉しいです。今後は未定ですが、また機会がありましたら、よろしくお願いいたします。 (2022年12月14日 22時) (
レス) id: 2c15e54c18 (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - このお話大好きだったので終わってしまうのめちゃめちゃ寂しいです。また機会があればこっそり戻ってきていただけると泣いて喜びます！ (2022年12月12日 9時) (レス) @page50 id: 436e54c814 (このIDを非表示/違反報告)
アクモ(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます。これからも、よろしくお願いいたします。 (2022年11月22日 0時) (レス) id: 2c15e54c18 (このIDを非表示/違反報告)
あ - 毎話読ませて頂いてます。更新楽しみにしています。 (2022年11月21日 0時) (レス) @page33 id: a9a7eea51c (このIDを非表示/違反報告)
アクモ(プロフ) - くろさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて、嬉しいです！(作者) (2022年11月1日 21時) (レス) id: 2c15e54c18 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アクモ | 作成日時：2022年10月25日 0時
