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次は無理だからな、と思いながら電話を睨むと、
睨まれた電話がまた鳴り始めた。
プルルルル……
普段はこんなに鳴らないのに、どうして今日に限って！
もう半泣きになりながら、電話を取る。
『あ、阿部でーす。あれ、佐久間？』
聞こえてきた声に、一気に緊張が解ける。
佐久間「え、阿部ちゃん？」
阿部『佐久間が出るって珍しいね、大丈夫？』
佐久間「ぜんっぜん、大丈夫じゃないー」
聞きなれた声に、うっかり涙がにじむ。
阿部『仕事終わったから、今から帰るね』
佐久間「うん、早く帰ってきてね」
さっきと違って、穏やかに電話を終える。
阿部ちゃんの声を聞いたら安心しちゃって、
にじんた涙が増えてくる。
泣かないぞって堪えていたんだけど、
やっぱり無理で、ポタポタ落ちてきちゃった。
両手で涙を拭っていると、
電話を終えたふっかが来てくれて。
深澤「なんで、泣いてんの」
ちょっと笑いながら、ティッシュを差し出してくれた。
深澤「あ、２つ目の電話、誰だった？」
佐久間「阿部ちゃんだった。今から帰るって」
今度はちゃんと伝えることができた。
でも、ふっかを見ると、さっきの電話を思い出して、
また涙が落ちてくる。
佐久間「さっきの電話、ごめんなさい」
何も聞き取れないまま、回してしまって、
社会人失格だ、と落ち込んでしまう。
深澤「全然。取ってくれてありがと」
佐久間「ううん、ごめん」
電話は苦手だから、いつも取らなくて。
そしたら、もっと苦手になっていって。
それで、さっき、ふっかに迷惑かけたのは事実だし。
佐久間「次は、もっと頑張るから」
頑張っていないわけじゃないんだけど、
もっと頑張らなきゃ、みんなに追いつけない。
深澤「いいの、電話苦手なこと、知ってるから。
無理しなくていいんだよ」
ふっかの言葉はありがたかったけど、
いつも、みんなに甘やかしてもらってばかりで、
これでいいのかなって、ちょっとだけモヤモヤした。
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作者名：アクモ | 作成日時：2022年8月4日 0時
