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捌拾伍──あんず ページ40

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「炭治郎、あいつに勝てるかな」
「わからない。努力はどれだけしてもたりないんだよ」
 夜闇、薄い霧がふたりを覆う。真っ二つに斬られた岩の上にひとり、その下に少女がたたずんでいた。視線はふしぎと交わらない。遠くで虫の音が聞こえる。近くで少女のため息がもれる。
「ねえ、錆兎」
 真菰が名を呼んだ。錆兎は少女と目をあわせようとするが、緑がかった青の瞳は伏せられている。
「これからさ、もう一度……鬼殺隊にもどる?」
 難しい問いだった。刀を抜かなくなり鈍った体をここまで叩きなおしてくれた真菰。しかし、全集中の呼吸の感覚をとりもどしはじめたころからか、錆兎はぱたりと成長できなくなっていた。行きどまりに立ち往生する狐を、真菰は見守ることしかできない。
「もうもどれない」
 そう言うと、真菰がぴくり、反応した。
「ちがう。もどりたいの、もどりたくないの」
「わからない」
「錆兎!」
「わからないんだよ、自分がなにをしたいのか」
 強く諦めた者の落ちつきはらった言葉。彼の心情はきっと理解できまい、真菰はなにも言えなくなった。
 霧がいっそう濃くなっていく。錆兎はそのなかにふしぎなあたたかみを感じとって振りむいた。そこにいたのはたくさんの狐たちだった。その異様な空気感に、どんな言葉ものどを通らない。いごこちが悪いわけではない。むしろ時が止まったかのように穏やかだ。
「──あ」


アンズ──慎み深さ、不屈の精神、疑い、遠慮、臆病な愛、気後れ

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設定タグ:鬼滅の刃 , 錆兎 , 長編   
作品ジャンル:恋愛
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Rabbita(プロフ) - kokonaさん» とてもうれしいです、ありがとうございます。一ヶ月に一度の更新をつづけていけるように尽力いたします。今後ともよろしくお願いいたします。 (2023年4月13日 2時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
kokona(プロフ) - 投稿楽しみにしていました! (2023年4月8日 12時) (レス) @page39 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます。 (2022年12月19日 19時) (レス) @page36 id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
かおり - よかったです!これからも更新楽しみにしてます! (2022年10月22日 18時) (レス) @page35 id: bc17a1db16 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ご心配ありがとうございます、ただいま更新させていただきました。「待ってます」とのお言葉に本当に救われました。不定期ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。 (2022年10月16日 15時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Rabbita | 作成日時:2022年1月1日 19時

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