肆拾捌──ひぺりかむ ページ3
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時折雑談に笑い、時折鬼を倒しながら、一ヶ月、二ヶ月と時は過ぎ。新緑が山を彩り、爽やかな初夏の香りが鼻をくすぐるころ、ようやくこの日がやってきた。
「……あれ?」
「……え」「……あ」
気配を感じてAが刀を構えていると、姿を現したのは剣士。これはこの生活が終わることを意味する。二人は思わずハイタッチをした。
「今日は選別が始まって何日ですか?」
食い気味に訊かれ、
「たった今始まったばっかりですけど」
剣士が答えた瞬間、Aは錆兎のほうを振りかえった。
「聞いた!?」
「聞いた! 急ぐぞ!」
剣士に礼と幸運を願う旨を述べ、洞窟を飛びだす。お肉食べたい、とさけびながら走る二人の速さは、自転車をめいっぱいこいでも追いつけないほどのものであった。
三分ほどで山の入り口につく。やっと出られる、木の門をたたいて声を上げると、説明役の二人の子供──お館様、もとい産屋敷耀哉の子どもを産屋敷家に連れ帰る役割であろう男性が応えた。
「出たいなんて、そんなことできるわけないでしょうが!」
「わけがありまして! 私たち、半年前の最終選別の受験者なんです!」
「なにを言っているの、この山で半年生きのこるなんて無理に決まってるじゃない! さっさと戻りな!」
今度は女性の声。
「確認してもらえればわかります! 俺は錆兎、元水柱・鱗滝左近次の弟子です!」
錆兎が声を張りあげると、外の二人は“元水柱の鱗滝”という言葉に反応した。鱗滝様の? と相談している。
「わかりました、確認してみましょう」
「私、私はAと申します! 久楽寧時に確認をお願いいたします!」
遅れるまいとAもさけんだ。
「では二日ほどお待ちください」
その言葉に、二人は顔を見合わせてにんまりと笑った。
「「ありがとうございます!」」
ヒペリカム──きらめき、悲しみは続かない
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Rabbita(プロフ) - kokonaさん» とてもうれしいです、ありがとうございます。一ヶ月に一度の更新をつづけていけるように尽力いたします。今後ともよろしくお願いいたします。 (2023年4月13日 2時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
kokona(プロフ) - 投稿楽しみにしていました! (2023年4月8日 12時) (レス) @page39 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます。 (2022年12月19日 19時) (レス) @page36 id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
かおり - よかったです!これからも更新楽しみにしてます! (2022年10月22日 18時) (レス) @page35 id: bc17a1db16 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ご心配ありがとうございます、ただいま更新させていただきました。「待ってます」とのお言葉に本当に救われました。不定期ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。 (2022年10月16日 15時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rabbita | 作成日時:2022年1月1日 19時