陸拾参──黒針水晶 ページ18
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と、向こうからなにかか飛んできた。ラズリだ、Aは左腕を伸ばして乗せる。
「緊急伝達、緊急伝達。山ヲ二ツ越エタ先、小サナ村ニ鬼ガ出現トノ情報アリ。急行セヨ」
いつものように真面目に言うと、ラピスがバサッと翼を広げた。
「モウ、堅インダッテバ! 山ヲ二ツ越エタ先ノ小サナ村ニ鬼ガ出タラシイワ! 早ク行キマショウ!」
「繰リカエスナ、今ノデ十分伝ワッタダロウ」
「モット優シク、ヤワラカクシナサイヨ!」
「伝達ニソレラノ要素ハ不要」
「アーッモウ! 知ラナインダカラ!」
この二羽の会話も慣れっこである。喧嘩しているように見えるが、なんだかんだ信頼しあっているのだった。
「んじゃ、行きますか」
「被害が出てからじゃ遅いしな」
ふわりと音なく足を動かす。今の彼らが全力で走ると、現代で例えれば急行電車と並走できるほどだ。車と同じ速さならばジョギングほどにしか感じないらしい。体力おばけ、とでも言おうか。二人は毎戦、強くなっていっていた。
いっぽうそのころ、ある屋敷では──
「ご報告申しあげます! 近頃、水狐という二人組にたくさんの鬼が殺されています。すでに軽く八十は──うあっ」
ひざまずいていた人物は首を折られて死んでしまった。首から離れた蒼白な手。彼は本から目を外して顔を上げる。
「……水狐、か」
おもしろい。そうつぶやいた男は本を閉じて、琵琶の音とともに姿を消した。
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Rabbita(プロフ) - kokonaさん» とてもうれしいです、ありがとうございます。一ヶ月に一度の更新をつづけていけるように尽力いたします。今後ともよろしくお願いいたします。 (2023年4月13日 2時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
kokona(プロフ) - 投稿楽しみにしていました! (2023年4月8日 12時) (レス) @page39 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます。 (2022年12月19日 19時) (レス) @page36 id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
かおり - よかったです!これからも更新楽しみにしてます! (2022年10月22日 18時) (レス) @page35 id: bc17a1db16 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ご心配ありがとうございます、ただいま更新させていただきました。「待ってます」とのお言葉に本当に救われました。不定期ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。 (2022年10月16日 15時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rabbita | 作成日時:2022年1月1日 19時