伍拾捌──黄水晶 ページ13
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琥珀と瑪瑙は同時に刀を構えた。前方の空き家に鬼がいるのだ。息を殺し、足音をひそめ、気配を消して──
ばあん! 扉をけやぶるとほこりが舞う。すぐさま中に入って鬼を見つけた。
「お前ら、鬼殺隊──か」
まさに瞬殺だった。琥珀の一閃が鬼の頸を宙に飛ばす。
「すごい、錆兎……じゃなくて、琥珀、やっぱり強いね……でもなくて、強いな」
「不自然すぎだろう。まあ、ゆっくり慣れていけばいいさ」
「琥珀、の水の呼吸は、迷いなくまっすぐ降りそそぐ大雨みたい……だ!」
「大雨か。ふしぎなことを言うんだな」
初任務を難なく終えた二人。さすが、といったところか。鎹鴉が新たな任務を伝達する。二羽の名前は、琥珀の鴉がラピス、瑪瑙の鴉がラズリだ。
「裏山ニモ鬼アリ、複数ノタメ注意」
「ラズリ、アナタ棒読ミスギナイカシラ」
「伝達ニ感情ハ不要」
「堅スギル。ワタシ、コウイウ男ハ好キジャナイノ」
「君ニ気ニ入ラレル必要ハ皆無。我々ガスベキハ伝達ノミ」
「ハーッ、ツマラナイ。コレダカラ仕事人間ハ嫌ナノヨ」
「人間デハナイ、烏ダ」
「ウルサイワネ!」
口論が始まりそうな勢いだったので琥珀が、
「はいはい、静かに」
「もうつくよ……ぞ」
木の枝から枝へとびうつりながら進む瑪瑙にも、
「瑪瑙も口調に気をとられて警戒をおろそかにするなよ」
「わかってる! ……この辺り、鬼の気配が強いな」
枝から飛びおりて音なく着地し、刀に手をそえる瑪瑙。琥珀もああ、とうなずいて背をあわせた。
「──来た!」
かん、と重い音。弾いたのは先がとがるようにけずられた石であった。鬼の気配が動く様子はない。よく注意して耳を澄ますと、ほかにも木の上やしげみにいくつか存在を確認した。
「動く……ぞ」
「おう」
二人は同時に地面を蹴った。
〈水の呼吸・捌ノ型 滝壺〉
瑪瑙が一匹斬ると
〈水の呼吸・漆ノ型 雫波紋突き〉
琥珀は二匹斬る。
〈水の呼吸・肆ノ型 打ち潮〉
そのまま琥珀が体の大きな一匹をしとめ
〈水の呼吸・参ノ型 流流舞い〉
瑪瑙が残りの小さな二匹の頸をまとめてはねた。
「ふう。一瞬だな」
面で顔は隠れているが、琥珀はおそらく笑顔だ。瑪瑙も同意して、
「わ……俺たちの力もしっかり通用するということ……だ」
と返した。琥珀は慣れない口調にもごもごといじける瑪瑙にほほえましく思い、
「そうだな。次行くぞ」
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Rabbita(プロフ) - kokonaさん» とてもうれしいです、ありがとうございます。一ヶ月に一度の更新をつづけていけるように尽力いたします。今後ともよろしくお願いいたします。 (2023年4月13日 2時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
kokona(プロフ) - 投稿楽しみにしていました! (2023年4月8日 12時) (レス) @page39 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます。 (2022年12月19日 19時) (レス) @page36 id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
かおり - よかったです!これからも更新楽しみにしてます! (2022年10月22日 18時) (レス) @page35 id: bc17a1db16 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ご心配ありがとうございます、ただいま更新させていただきました。「待ってます」とのお言葉に本当に救われました。不定期ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。 (2022年10月16日 15時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rabbita | 作成日時:2022年1月1日 19時