私と別れて欲しい【狗巻棘】【完結】

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「新婦様、少し右を向いていただいて宜しいですか？」



『あっ、はい』





＿＿＿＿＿＿＿ついに迎えた、9月10日。


私の誕生日でもあり

私の結婚式でもある日。







結局温泉旅行ではなにもそういった行為はすることなく

司さんも色々大変らしくて会えず、

携帯も無いので連絡も取れずで

この日を迎えたのだ。






そして五条先生に送った手紙も

案の定なんの反応も無かったけど

今日のこと、覚えててくれてるかな。









「とても美しいです。

よく似合ってらっしゃいますね〜！！」



『はは…』









ドレスを着付けてくれた方がそう言ってくれる。

…美しいのは私じゃなくてこのドレスなのに。

私は。私の内側は特に汚くて美しくなんてないのに。









＿＿＿＿…あぁ駄目だ。雑念が消えない。

昨日、何故か高専の夢を見て特に。









駄目だA。今はこれに集中しなきゃ。

自ら大切な人を傷付けてまで選んだ道。

そんなに甘いもんじゃない事ぐらい、この2ヶ月で特に思い知らされただろう。









ｺﾝｺﾝ






「失礼します」





『…司さん』





そこにはセレモニーホワイトのタキシードを着た司さんが。


私を見るなり、




「Aさん、とても綺麗です」




と微笑んだ。









ありがとうございます。と頭を下げると









「お偉いさん方へ挨拶に行ってきます。

そばにいれなくて申し訳ありません…。」








と、司さんは申し訳なさそうに謝ってくる。

いえいえ、気にしないでください。と答えると、

司さんはまた部屋から出ていった。









着付けの方も居なくなって、

私は持ってきた鞄の中身を漁り、1枚の写真を手に取る。









これは憂太くんが海外に行く前日に撮った5人と五条先生と撮った唯一の集合写真。









…私はこの式が終わったら " 西園寺 " Aになる

この時の天國Aは居なくなる。









そしてこれからのやる事は

後継のために知らない場で尽力するのみなのだ。









＿＿＿＿でもどうか最後だけ、思い出に浸らせてください。









なんて思っていると、目の方がじんわりと熱くなってきた。






都合のいい女だ。最後の最後まで。









．









…綺麗にしてもらったメイクが落ちるとまずいので

ティッシュで軽く拭き取る。









．









＿＿＿＿＿＿＿＿式が始まるまであと30分。









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