遠くのバラより近くのタンポポ (ページ42)

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肆拾壱ページ42

「よし、お前ら。これに着替えろ。お前は隣の部屋使え。」

そう言って渡されたのは羽織と同じ、鱗文の入った赤い着物だった。

いつも隊服ばかりきていたので、帯のキツさといい、脚にまとわりつく布といい、非常に慣れないがなんとか着ることができた。

「師範、着れま…えっ！？」

「おう、こいつらが終わったらお前の番だからな！」

そこにいたのは、ヘンテコな髪型をしてヘンテコなお化粧をされている炭治郎だった。

「A！よく似合っているぞ！少し待っていてくれ！」

「し、師範！？こんなへ…奇抜な見た目じゃ売れませんよ！！」

「あ？こいつらが地味すぎるから俺様が派手にしてやってるんだろ？俺様の手にかかれば売れっ子間違いなしだ！」

ひょえ～、私は自分でやろ。

「そ、そうですね～。でも4人ってなると時間かかっちゃうので、私は自分でやりますね～。」

そうか、と言って嫌がる善逸を捕まえた師範を横目に、鏡台の前に座る。
藤の家紋の家の方が持ってきてくれた簪で適当に髪をまとめ、白粉と紅をさす。

可笑しなもんだなぁ。もしかしたら、こうして粧しこむ毎日を送っていたのかもしれないと考えると、死と隣り合わせの毎日を送る自分が本当に不思議だった。

よし、こんなもんかな。

「終わりました。」

振り返って師範と3人の様子を伺うと、ちょうど伊之助の準備が完了した様だ。

「A…お前…。」

師範は驚いた顔で何か言おうとしている。
えっ、そんなに変だった！？
何を言われるのか、ドキドキしていると、

「派手に化けたな…本当に客ついちまうぞ。」

「え？やだなぁ師範！褒めたって何も出ませんよ！」

んふふ！そんなに可愛い！？あんなに可愛いお嫁さんのいる師範に言われるとなんか嬉しくなっちゃうわ～。

「…あ、この不細工どもを見たあとだからか。」

なっ…！なんだとコラァ！上げて落とすんじゃねぇこの派手柱！！！！

「だが、お前1人普通じゃかえって目立つな。よし、俺が手直ししてやる。」

ん…？まってイヤ…イヤ…

「イヤだァァァ！！！」

善逸…赤くなってないで助けてよぉぉぉ！！！

紅差し指で紅を差すAちゃん…もし、鬼のいない世界で、もし、君の1番近くにいれたなら、こんな素敵な君を毎日眺められるのだろうか…。

その時、Aちゃんが振り返った。

うわぁぁぁぁ！！！絶対今いい匂いしたぁ！！なんかお花！お花見えたよ！！

はぁぁぁぁぁ。Aちゃんが遊女なら、絶対身請けするのに。