遠くのバラより近くのタンポポ (ページ36)

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参拾伍ページ36

よし、聞くぞ俺！がんばれ俺！

「あのさ、Aちゃんって、その、好きな人とか、こ、恋仲の人って、い、いたりするー…？？」

めっちゃ噛んだ！！！恥ずかしい…！！でも、とりあえず聞けたぞ！！えらい俺！頑張った俺！

「…どうしたの急に？別に、いないけど…。」

“けど…” … けどってなに！？けどって！？

えっ！

善逸に言う必要ある？

みたいなことじゃないよね！？ちがうよねぇ！？！？

はっ！Aちゃんが不思議そうにこちらを見ている…。

「そっか～！！いやぁ、なんとなく！なんとなくだよ？鬼殺隊に入って結構経つし、Aちゃんにそういう人っているのかなぁって気になっただけ！うん！それだけ！」

誤魔化してしまった…。でも、やっぱりまだもう一歩踏み出す勇気が出ないんだ。

「…まぁ、気になってる人はいなくもないけど…。」

ちょっと待ってぇぇぇぇ！！！それ本当に本当に本当！？！？！？さっきの“けど”ってそういう意味だったのねぇ！！

「えっ！？そうなの！？！？」

「ねんてね！」

「もう！！びっくりした！！」

そっかぁ、俺に気を使ってくれたのか。

冗談だ、と言って笑うAちゃんからは、嘘をつく音と、寂しいような、悲しむような音がした。

君の好きな人になりたい。

ただそれだけなのになぁ。