遠くのバラより近くのタンポポ (ページ31)

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参拾ページ31

「はぁ、はぁ、しのぶさん！お邪魔します！」

しのぶさんを探そうと、屋敷に入ると、すぐに彼女の方からやってきた。

「Aさん、ぜ…」

「善逸は！？！？3人は無事ですか！？」

私が珍しく焦っていた所為か、とても驚いた様子で、それからいつもの笑顔になって、

「えぇ、3人とも無事ですよ」

と、答えてくれた。

それから、3人のいる部屋に案内してくれた。

「では、ごゆっくり。」

「…ありがとうございます。」

私は深く頭を下げて、しのぶさんが立ち去るのを見送った。

扉を開ける勇気が…ない…。

無事とはいえ、もしひどい怪我だったら？生きていたとしても、一生目を覚さない、なんてこともあり得るんじゃないか？

もしそんなことになったら…私は一体どうすれば…。

いや、考えていても仕方がない。腹をくくれ！

私は、ゆっくりと扉を開けた。

まったく。Aさんは本当に善逸君のことが好きですね。あんなに慌ててお見舞いにくるだなんて…可愛らしい。善逸くんも隅に置けないですねぇ。

前に直接聞いたことがあった。

「Aさんは、善逸くんのことが好きなのですね。」

「いや！違います！」

あっ、いや、違くはないか、なんてぶつぶつと自問自答を繰り返す彼女を見て、あぁ、好きなんだなぁと思っていたが、今日の慌てっぷりを見れば誰だって気がつくだろう。

きっとあの鈍感な冨岡さんだって分かります。…いえ、冨岡さんにはムリですね。

早くくっつけば良いのに。

まぁ、あの2人なら大丈夫でしょうけど。

まるで、自分のことかのように楽しくなったしのぶは、1日ずっとご機嫌だったらしい。