弐拾陸 ページ27
「その後、保護してくれたお医者さんの知り合いだったおじいちゃんに引き取られたの。
悲しかった。辛かった。兄の最後の涙を思い出すたびに、私は生きていていいのか、と不安に駆られる。
兄がひどいことを言って、私を突き放そうとしたのは分かった。私を守ろうとしてくれたんだって。でも、それを分かった上で逃げてしまった私は、…ひどい奴なんだ…最低な奴なんだ…。
あぁ、ごめんなさい。お兄ちゃん。
私なんていなければ。ごめんなさい。ごめんな…
「そんなことない!!」
はっ!として顔を上げると、善逸の少し怒ったような、悲しむような、でも、真っ直ぐな瞳が…私の視線と交わった。
「お兄さんは、Aちゃんに行きてほしかった。Aちゃんはそれに応えた。お兄さんの意思を尊重したAちゃんの判断は何も間違っていない!
そんなに自分を責めちゃだめだよ。怖いのなんて当たり前でしょ!?逃げるに決まってるじゃない!
それにさぁ、俺はAちゃんが生きててくれて嬉しいよ。」
うれしい………?
こんなダメな奴が生きてていいの?
善逸は、私に生きてて欲しいの?
どうして…?分からない…?
「どう…し…て…?」
泣きそうなのを必死に堪えて、なんとか声を振り絞った。
「Aちゃんのこと大好きだからさぁ、俺…。
…それにさ!!Aちゃん、俺のこと守ってくれるんでしょ!?Aちゃんいなくなったら、俺死んじゃうよ!?」
俺なんて、鬼殺隊になっても鬼怖いし、逃げるのに、Aちゃんは偉いなぁ、なんて微笑みながら言う善逸。
私は首に巻いていた鈴をチリンチリン、と指で弾いた。
心臓の音が、このドキドキが、耳の良い彼に聞こえてしまわないように。
まったく、人の気も知らないで。
君の好きと、
「…ありがとう、善逸。私も大好きよ。」
私の好き、
どれくらい違うか、ちっとも知らないくせに。
ぽかーんとした善逸を見て、少しばかりで過ぎた真似をしてしまった、と後悔した。
善逸…困ってるよね…。
「ぜ、善逸は私が守るから!」
「あ…う、うん!ありがとう、ありがとう!」
お互いによく分からなくなって、顔を見合わせて笑った。
その頃には、涙なんてどこかに行ってしまった。
- 金 運: ★☆☆☆☆
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- 健康運: ★★★★★
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作者名:春風の通り道 | 作成日時:2020年3月24日 21時