ひろいもの【芹澤朋也】 (ページ15)

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「笹木効果かもね」

言いたことはお互い沢山あった。

しかし眠気に負け、俺たちはそのままベッドに倒れ、朝まで眠り込んでしまった。

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大晦日。

朝から笹木さんと真衣は、2人で何だかんだ言いながら、黒豆や煮染めなどの簡単なおせち料理を作った。

俺は風呂場やベランダを掃除した。

途中何回か休憩を入れ、皆んなで渋めの熱いお茶を飲み、最後に台所を綺麗に片付け、大掃除を終える。

夜は炬燵で蕎麦を食べて、紅白歌合戦を見た。

笹木さんは「若い人の歌は速すぎて、何を言ってるのかサッパリ分かりませんねえ」と言い、真衣は「演歌はどれも一緒に聴こえるけど、これはさっきの人の歌と違うの？」と首を傾げた。

翌日の元旦。

笹木さんと真衣が作ったおせちを食べ、お餅を食べ、腹が膨れると炬燵でダラダラする。

昼過ぎから近所の神社に初詣へ行った。

笹木さんのレクチャーを受け、正しい作法でお参りをしておみくじを引いた。

笹木さんは大吉で、俺と真衣は小吉だった。

笹木さんは「私だけこんなものを引いてしまって、すみません」と頭を下げる。

帰りに境内の屋台でベビーカステラを買って、3人でつまみながら歩いた。

小さい頃、家族で過ごした定番の年末年始だ。

紅白歌合戦も年越し蕎麦も、おせち料理も初詣も。

こんな風にしたのは何年ぶりだろう。

お正月は、本当にゆっくり時間が過ぎる。

こうやって昔の慣わしに従って時間を過ごすと、それが分かる。

「そう言えば、お正月はお帰りにならないのですか？
お2人とも実家があるのでしょう」

夕飯にも同じようにおせち料理を食べながら、笹木さんが言う。

「まあ」

「私がお邪魔してしまっているから、帰れないのではありませんか？」

俺は慌てて首を振る。

別に笹木さんがいなくても、元々実家に帰る予定はなかった。

「私、ここ何年も、お正月は実家に帰っていないんだ。
道も新幹線も混むし、わざわざ帰らなくてもって」

「なるほど、そうでしたか」

「俺は大学入学と同時に実家を出たから、家を離れて7年も経つんですよね。
そうなると、なかなか帰るのが億劫で。
この前爺ちゃんの法事で帰ったし、いいかなと」

笹木さんはツヤツヤ光った黒豆を口に入れる。