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笹木さんは心なしか、しょんぼりして見えた。




「そんな事ないっすよ。
俺が無知なだけで・・・」



「いいえ。
朋也さんは、無知ではありません。
・・・公園で暮らしていると、今までの自分がバカらしくなります。
昔の文書を紐解いて、言語について調べて。
何の、誰の役に立つのでしょう。
世の中と同じように、言葉は常に変化し、変わっていくのに。
公園の先人たちは多く語らずして、大事なことを教えてくれます。
私は言葉をあれこれ使い、結局無駄な知識を学生たちに伝えているだけに過ぎませんでした」



「そんなことない・・・」




俺は何と言っていいのか分からず、同じような言葉を繰り返す。




「そんなことあります。
私のしてきた仕事なんて、単なる徒労です。
ゴミを集めることの方が、よっぽど生産的だ」



「大抵の仕事なんて、そうっすよ」




それから俺たちは、ボソボソと仕事について話をした。



子供の頃やりたかった仕事のこと、現実に社会に出て味わった思いもしなかった様々な出来事を。




「でも、ゴミ拾いは笹木さんに合ってない気がします。
良い仕事か悪い仕事かは別にして、公園で生活する事は、何だか違うって気が」



「それは真衣さんにも言われました。
公園で座っていましたら、突然『貴方がこんな事しているのはおかしいですよ』って」



「当たってると思います。
彼女偉そうだけど、直感だけは冴えてるから」




俺たちが笑っているとドアが乱暴に開いて、真衣が入ってきた。



両手に大きなスーパーの袋を提げている。




「ちょっと。
2人して電気もつけず、暗闇で何してるのよ。
気持ち悪いなあ」




真衣はそう言いながらリビングの電気を点ける。



知らない間に、外は暗くなっていた。




「ほんとだ」



「随分時間が経ってたんですね」



「もう17時よ、17時」




真衣に言われて時計を見ると、確かに17時を過ぎていた。




「昼ごはんも食べるの、忘れてましたね」



「年賀状もほったらかしだ」




俺と笹木さんは顔を見合わせて笑った。
































「何してるの?」



「年賀状書いてる」



「年賀状って、昼間作ったんじゃないの?」



「途中までな」



昼間に年賀状を半分程しか作れなかった俺は、寝室の小さな机の上でハガキを書いていた。



「今年は手書きなの?」

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作者名: | 作成日時:2022年5月22日 15時

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