ひろいもの【芹澤朋也】 (ページ11)

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「久々に朋也のこと、いい男だなって思ったよ」

「そうか？」

「うん。
笹木効果的面。
2日目にして、好きだって気持ちを取り戻した」

笹木効果かは分からないが、凄く久しぶりに真衣に『好き』と言われ、俺はドキッとして嬉しくなった。

思わず、真衣の肩に腕を回す。

「そういうのは、いいや。
朋也は明日から正月休みだけど、私はまだ仕事だから」

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翌日。

目を覚ますと真衣は既に出勤しており、リビングには笹木さんだけがいた。

笹木さんは元々の自分の服なのか、ベージュのカーディガンを着ていて、ジャージの時より老けて見えた。

「えっと、おはよーございます」

俺は笹木さんと2人きりになるのは初めてで、どぎまぎする。

「おはよう御座います。
朝、パンを買いに行ったのですけど、朋也さんも食べますか？」

笹木さんは食卓を指差す。

テーブルの上に近所のパン屋の袋があった。

「ありがとうございます、食べます」

俺はパンを食べ始めたが、沈黙に耐えかね、笹木さんに質問する。

「笹木さんは普段、何をしてるんすか？」

「仕事です」

「仕事？」

「はい。
仕事と言っても、ゴミを集めて商店に持って行ったり、時々職安に入る作業をしたりするくらいですけど」

「へえ・・・」

「今、ゴミは山ほど転がっていますからね。
あっという間に集められます。
空き缶なんか、1キロで40円そこそこになるんですよ。
凄いでしょう？
昔はゴミなんて見過ごしていましたが、今は道を歩く度、地面にお金が転がっているような気がしてしまいます」

笹木さんはそう言って笑う。

「なるほど。
いろんな仕事があるもんなんですね」

「朋也さんは何をされているのですか？」

「俺は教師をしてます。
笹木さんとお揃いです」

「なんと」

笹木さんは嬉しそうに笑った。

他人がいる家は落ち着かない。

自分の家なのに、すっかりペースが狂ってしまう。

俺は休日なのに、朝食を終えると髭を剃り、髪も簡単にセットした。

いつもの休みの日では考えられないことだ。

「今日は年賀状を書こうと思ってるんです。
書くっつっても、パソコンですけど」

俺は聞かれもしないのに、自分の予定を笹木さんに報告した。