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「拾ってきちゃった」





玄関まで出迎えに来た真衣が、俺の姿を見るなり言う。





「何を?」





俺はジャケットと靴下を脱ぎながら、リビングに向かう。




社会人になって3年が経つが、なかなかスーツには慣れない。





「拾ったっていうのは、何か違うんだけど。
その・・・連れてきたっていうか・・・。
ちゃんと靴下は、その足で洗濯機に入れてよ」




「はいはい。
で、拾ったのは何?」





真衣は考え込むように、眉間に人差し指を当てる。




何かまずい事がある時の、真衣の癖だ。





「どうせまた、おかしなガラクタを持って帰ってきたんだろ。
今度は何?」





俺は洗濯機に靴下を放り込み、リビングのカーテンレールに干したままのトレーナーを、頭から被る。




暖冬というけれど、太陽がしっかり出る日は少ない。




冬の寒さは嫌いではないが、いつも部屋の中に洗濯物がぶら下がっているのは、いただけない。





「『どうせまた』って失礼ね。
いつ私が、ガラクタを持って帰ってきたのよ」




「へえへえ。
どうでも良いけど、これ以上物を増やさないでくれな。
部屋だって、そんな広くないんだから」





真衣と一緒に暮らして1年以上になる。




付き合っている時には気付かなかったが、一緒に生活をするようになって、真衣は物凄く好奇心旺盛なのが分かった。




ーー好奇心旺盛というか、気が変わりやすいというか。




兎に角、次から次へと色んな物に手を出したがる。




それは構わないのだが、勘弁してほしいのは、それらにまつわる物を部屋に持ち込むことだ。




民芸品を高い金を叩いて買ったり、カブトムシを捕まえて育たり、叩きもしない和太鼓を譲り受けたり。




真衣と暮らし始めてすぐ、俺たちの住まいは風変わりで雑然とした部屋になった。




今回は何なのだろう。




家の中を見渡してみる。




何かが増えた様子はない。




連れてきたということは、犬や猫の類だろうか。





「部屋は狭くならないよ。
今回のは可動式だから」




「可動式?」




「そう。
自由自在、縦横無尽に動くんだ。
私だって、ちゃんと部屋のことを考えてるんだよ」




「へー?
じゃ、さっさと見せてよ。
腹も減ってきたし」





俺はソファーにどかっと腰を下ろす。





「今日、お寿司取ったんだ。
早く朋也の許可を取って、ご馳走を食べないと」

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作者名: | 作成日時:2022年5月22日 15時

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