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真衣の正論に、美佳は表情を歪める。





「そもそも、人工妊娠中絶は基本的に、妊娠している本人と胎児の父親の了承が必要だ。
キミは了承したんだろ、子供を堕ろすことを」



「ちょっと、先生」




俺は真衣を止めようとする。



真衣は悪気無く事実を述べているだけだが、高校生には少々キツすぎる。




「仕方ないじゃない!
あの時は訳が分からなくなってたんだから!!
妊娠してるって言ったら、お母さん半狂乱になって、彼の家に乗り込んで土下座までさせたのよ。
それに『すぐ堕さないと、アンタはうちの子じゃなくなる。うちから追い出してやる』って叫び続けて。
もう、どうしたら良いのか分からなくて・・・」




美佳は両手で顔を覆い、嗚咽を漏らし始める。




「混乱して中絶を受けることに同意した。
けれど、実際に受けてみて後悔した。
そういうことだな」




真衣の言葉に、美佳は肩を震わせながら頷く。




「今度こそ・・・この子は私が守るの。
今度こそ絶対」



「だから、そうすればいいだろ」



「え・・・・・・」




真衣の言葉がす理解出来なかったのか、美佳は顔を覆っていた両手をだらりと下げ、涙で濡れた目を瞬かせた。




「今キミが妊娠しているかどうか、まだ分からない。
ただ妊娠しているなら、キミの許可無しに堕ろせない。
もし堕さないという決断をしたら、キミは家から追い出されるかもしれないし、親子の縁を切られるかもしれない。
それでも産みたいと思うなら、産むべきだ。
キミはまだ法律的には未成年かもしれないが、もう十分に判断力を持った1人の人間だ。
自分で選択して、責任をとれ」




美佳は両手を握り締め、唇に歯を立てる。




「検査を受けていないと、胎児に異常があっても対処出来ない。
だからキミは検査を受ける必要があるんだ。
分かるな?」




真衣の言葉に、美佳は目にうっすら涙を浮かべながら、力強く頷いた。



























「あらー、真衣ちゃん。
久しぶり」




産婦人科外来に入った瞬間、テンションの高い声がかかった。



目を大きくする俺の正面で、薄茶色のパーマがかかった髪の白衣の女性が、両手を振っている。



年齢は俺と同じくらいだろうか。



優し気な垂れ目が、間延びした口調と妙にマッチしている。




「ああ・・・」




逆に真衣はテンションが低く、気怠そうに片手を上げた。

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作者名:井原 | 作成日時:2023年10月5日 22時

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