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そんな盛況を見せる屋外販売スペースで、忙しく立ち働いているマッチョなお方ーーそれが店長の本木シオリだ。
シオリは真衣が撮った写真をひと目見るなり、あっけらかんと言った。
「あっらー。
やっちゃったわね、真衣ちゃん。
今年はお花無しね」
刺さった。
真衣はその場に、崩れ落ちるようにしゃがみ込む。
横では玄師が肩を震わせ爆笑していた。
「だから言ったのに」
「そんなあ・・・」
今年は花が咲かない。
ということは、実もつかない。
まる1年、収穫無し。
「何が不味かったのかしらねえ。
冬場の剪定で、花芽が出る枝を切っちゃったりしてない？
じゃなかったら、肥料が不足しちゃったか・・・まあ、果物は難しいわよ。
大丈夫よ真衣ちゃん、そんなにガッカリしなくても。
一生このままってことはないから。
来年にはまた咲くから」
「でも、今年は絶対に無理ってことですよね・・・」
「花芽自体が無いものねえ」
「うう」
無い袖は振れない。
これから1年花も実も見込めない緑の鉢に、水を遣り続けることを考えると、ちょっと泣けてきた。
「そんな寂しい貴女に、朗報」
打ちひしがれる真衣の肩を、シオリが優しく抱き寄せる。
「シオリさん？」
「どう？
ここは1つ、新しい子をお迎えするの」
真衣は恐れ慄きながらシオリの顔を見返す。
「蜜柑、レモンに柚子にシークヮーサー。
柑橘だけでも可愛い子がいーぱい揃ってる。
実がつきだしてる子を選べば、確実に食べられて安心だし」
「ちょ、待って。
そんなこと出来ません。
ミッチーを裏切るなんてそんな！」
「ペットロスは、ペットを飼うことでしか癒せないって知らない？」
「別に死んだわけじゃないって、シオリさん言った！」
真衣は誘惑を断ち切るべく、耳を塞ぎ顔を背ける。
その横でシオリは、笑顔でセールスを続ける。
「見て。
例えばこの�爛團鵐�レモネード�瓩箸�、真衣ちゃんに凄くオススメなのよ。
レモンなんだけど皮が縞々でね、切ると果肉が綺麗なピンクなの。
食べてもジューシーで甘くて」
やめろやめろ、私にはミッチーがいるのだ！
「でも本気で寂しくない？
この1年、ただお水あげて待つだけっていうのも」
確かにそうだけど。
それは本当なんだけど。
真衣は泣きたい気持ちでシオリを見遣る。
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作者名：井原 | 作成日時：2023年2月28日 3時
