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そういう台詞を、何故こういう時に無駄に使いますか！
滅多に言ってくれないのに。
「で、何の話？」
「・・・レタスが、めちゃくちゃシャキシャキなんです。
それがたっぷり新鮮でいっぱいなんですけど、生姜焼きの味が濃い目で丁度良い加減なんです。
辛子マヨも胡椒もきいててグーです」
「よく分かんないけど、美味いってことね」
そうなのだ。
普段はサブに回ることの多いレタスだが、今回は別。
重ねた葉物のパワーというか存在感を、こんなに身近で感じさせてくれるとは。
「普通にハムとかチーズでもいけるよ。
リーフレタスがなければ、ただのレタスでも良いし」
「それはそれで、違った食感になりそうです」
喋りながら合間にトマトをパクつくが、薄切りトマトを入れても美味しいかもしれないと、こっそり思う。
玄師は多分、良い顔をしないだろうが。
コツは兎に角、レタスをケチらないことだろう。
水切りが大事というのも本当か。
『今日はレタスを食べる』と言ってコレを作った玄師の心意気が伝わってくる。
「真衣、ところでさ」
「何です？」
「キミの所の蜜柑、まだ花咲かないの？」
ーー沈黙が降りた。
出来るなら、聞かなかったフリをしたい。
しかし玄師は、わざわざサンドイッチを食べる手を止め、真衣の返事を待っている。
普通に返事が貰えるものと思っている。
クソ。
直前まで違う話題だったので、油断した。
こうやって息をするように園芸ネタに持ち込めるのが、園芸沼の沼たる由縁だろう。
真衣の蜜柑。
それは、真衣が自分の部屋のベランダで育てている、温州みかんである。
名はミッチーと言い、去年の春に玄師とお近づきになった記念に貰った。
あれから今日この日まで、大事に大事に可愛がってきたつもりだ。
「あ、薔薇ですか？
なら大丈夫、咲いてます。
順調です」
「蜜柑だよ。
薔薇の話はしてない」
真衣はやや目を逸らし気味に言う。
「・・・ちょっと、そっちの成長は遅めかもしれません」
「遅めって、いくらなんでも遅過ぎる。
花芽もついてないんでしょ。
去年の今頃だったら、とっくに花も咲きだして」
「角の！煙草屋さんの！金柑も花咲いてません！！」
「・・・・・・」
金柑。
あれも柑橘類の木だ。
何となく言葉を失くしている玄師がいるが、真衣も主張を曲げない。
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作者名：井原 | 作成日時：2023年2月28日 3時
