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真衣がナイフを入れると、間から熱々のチーズが蕩け出す。
そこをパクッと一気に口へ。
うんうん、大丈夫。
失敗してないみたい。
ハムとチーズの塩気に、付け合わせで添えたオレンジのマリネ。
甘酸っぱいこちらと合わせると、生ハムにメロンや、スイカに塩を振るような、異なる出自の幸せな出会いを感じる。
刻んだバジルも全体を引き締め、いい仲人役になっていた。
「甘味は全然入れてないんだ」
「そうです。
おかずフレンチトーストだから、甘くしないんです」
「オレンジにも、塩とオイルで味付けてる。
風味付けで生バジル」
玄師は食べながら、あっという間に真衣のレシピを解体してしまう。
この辺りは流石というか、年季の違いかもしれない。
「・・・どうです。
美味しいですか？」
恐々と尋ねる真衣。
「まあ、そうだね・・・真衣にしては、随分凝った朝食だと思う」
「いけますか」
「うん、美味しい。
どこで覚えたの」
「へへへ。
実はカフェで食べたメニューのパクリです」
正直に白状する。
あまりに美味しかったので、店員さんにあれこれ聞いたのだ。
「ふーん・・・カフェね」
対する玄師の反応は、思ったより淡白なものだった。
「一緒に行ったのは、沖縄出身友人A？」
「え、美菜都ちゃんですか？
そうですよ」
しかし玄師はまたもや薄い反応で「なら良いけど」と頷くだけだ。
さすがに真衣も、何やら違和感らしきものを覚える。
「・・・何かありました？」
「いや。
だから友人Aなら、それで良いんだって」
「本当ですか」
玄師はあくまで普段通りだと言い張り、残りのフレンチトーストを食べ続ける。
「・・・昨日、真衣はバイトだったよね」
「はい、そうですよ。
遅番で」
「大学最寄りの、西口の」
「はい。
それがどうかしましたか」
「昨日、飲んでる時に見かけたんだ。
真衣が働いてるの」
「えー」
真衣はフォークを手に、噴きそうになった。
なんだ、それなら充分『何かあった』部類だろう。
「やだな、本当ですか。
改めて言われると、恥ずかしいですね。
私変なことしてませんでしたか」
「櫻井も一緒に働いてるんだね」
サラリと言われ、真衣はやや言葉に詰まる。
妙な�犂岫瓩�できたかもしれない。
「・・・そうですよ。
ほんとに偶然で、最初はビックリしました」
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作者名：井原 | 作成日時：2023年2月28日 3時
