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そのために、わざわざ隣の陣地から厚めの食パンを持ってきたのだ。
金属製のバットに卵と牛乳を入れて溶きほぐし、食パンを浸す。
「作れるんだ」
「感心してくれるなら、ベランダ行って、バジル何枚かむしってきて下さい」
真衣がキッチンザルを突き出すと、玄師は頭にタオルを載せたまま、無言でキッチンを出て行く。
目線で�猯笋燭き瓩帆覆┐蕕譴慎い�するが、真衣は気にせず作業を続けた。
パンに卵液を浸している間に、今度は具材作りだ。
冷蔵庫から生のオレンジを取り出し、皮と薄皮を剥いてボウルに入れる。
どうせ掻き混ぜるんだから、剥く時に多少ぐちゃぐちゃになっても気にしない・・・と。
不器用に果汁を滴らせながら、オレンジ1個分を剥く。
「ほら真衣、取ってきたよ」
「ありがとうございます、米津さん。
終わったなら、こっちでフレンチトースト焼いといてくれませんか」
「は？」
「私、まだ手が離せないので」
やはり玄師は無言でフライパンを火にかけ、バターを溶かしてパンを焼き始める。
背中が心なしか孤独そうだったが、今はそれどころではない。
オレンジが剥き終わったら、今度はオリーブオイルと塩を入れる。
そして今年もやってきました、バジルの季節！！
�爐僂僉爾鶚瓩版焼發埜�果音も付けてしまう。
5月に植え付け、だんだんと葉を茂らせ始めた、夏野菜の香草バジル様だ。
ころんと丸い葉のラインも愛らしい。
玄師が取ってきてくれたソレを、まな板の上で軽く刻むと、フレッシュな香りが立ち上った。
刻んだバジルを、ボウルの中のオレンジと一緒に和える。
「米津さん、そっち焼き上がりましたか」
「こんなもんでどう？」
「おー、良いですね」
フライパンのフレンチトーストは、バターがしゅわしゅわと音を立てている。
2人分の皿に取り分けると、すかさず真衣はバジルと和えたオレンジを載せる。
ついでに飾り用の葉も1枚、ちょこんと添えた。
橙とグリーン。
実にカラフルだ。
「へっへっへ」
「おお。
ちゃんと食べ物になったじゃん」
「オレンジとバジルのおかずフレンチトースト、出来上がり！」
真衣は皿を持ち上げ、いそいそと食卓へ進んだのだった。
・
・
ダイニングテーブルに付き合い、コーヒーと一緒に頂くことにする。
まずは焼き立てフレンチトースト。
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作者名：井原 | 作成日時：2023年2月28日 3時
