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続けてミキサーで作った沼を注ぎ込み、仕上げにコンソメキューブを入れる。
「鍋がますます沼っぽく」
シメジが森を思わせる。
これが本当にカレーになるのだろうか。
「さて、真衣。
ここでキミのこぶみかんの出番だ」
「ついにですか！
何枚いりますか？
1枚ですか、2枚ですか。
それとも、枝ごと？」
キッチンの床に待機させていた鉢と鉢皿を、じゃあん！と玄師に向ける。
「いや、ただの香り付けだから。
そんなに要らないよ。
先端の1枚で良い」
キッチンバサミを手に、ギラギラと前のめりな真衣に対し、玄師は若干引き気味に言う。
仕方なく真衣は棘のついた枝を摘み、先の方をパチンと切った。
「そこで匂い嗅がないで」
「だって、気になるじゃないですか・・・」
当たり前かもしれないが、ちゃんと蜜柑の匂いがする。
同じカレーに入れる葉でも、月桂樹とは匂いが全く違うのだ。
真衣から葉を受け取った玄師は、軽く洗ったその葉を凝視している。
「どうかしました？」
「・・・隔年結果になる前提でこぶみかんを選ぶって、どんだけ後ろ向きなんだと」
「ほっといて下さい」
こぶみかんの棘で突いてやるぞ、コラ。
「まあ兎も角、これを放り込んで暫く煮込む。
その鉢はもう要らないからしまってきな」
「分かりましたー」
実に短い出番であった。
陣地である自室へ行き、ベランダに鉢を置いて戻って来ると、玄師がココナッツミルクの缶詰を開けていた。
鍋の水が、緑色のままゴボゴボと湧いている。
そこに玄師は、缶の白い中身をドロリと投下した。
怪しく白濁していく沼。
カオスだ。
「これが湧いたら、ナンプラーと砂糖を入れて調整する」
「カレー・・・なんですよね」
「カレーだよ」
調味料を振り入れて掻き混ぜると、怪しい沼色だった中身は、やや黄味がかったパステルグリーンに変わる。
「あ。
なんかグリーンカレーっぽいかも。
見たことある感じ！」
香ってくる匂いも、ココナッツミルクと香辛料が混じり合い、いかにもエスニックといった感じで食欲をそそる。
「米津さん、私たちカレーを作ってたんですね」
「だから、初めからそう言ってる」
「私、ご飯よそってきます」
真衣はいそいそと炊飯器へ向かう。
カレー皿に、硬めに炊き上がったご飯をよそい、玄師に渡す。
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作者名：井原 | 作成日時：2023年2月28日 3時
