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「何度か理由を尋ねたが、ニヤニヤ笑って、はぐらかされた」
「えっと・・・み、見た目が可愛いとか、そういう理由だったかもしれません。
赤くて綺麗だし、クリスマスのリースを作ったりとか」
「子供が巣立ってから、1度もクリスマスケーキも買わない妻に、そんな酔狂な趣味があるだろうか」
ーーいや、ない。
真衣は本格的に袋小路に嵌った気がした。
だが、まだだ。
きっとまだ何かある筈だ。
どうにかして、フォローする道を探すのだ。
「繰り返すが、私は甘党なんだ」
「はい。
窺っております」
しかし針穴に糸を通す道を探すような懸命さが、顔に出ていたのかもしれない。
教授は今度こそ皮肉気に笑った。
「久里坂くん、もういい。
彼女はね、何年ぶりかの趣味を復活させる時に、わざわざ私の嫌いな唐辛子を選んで植えたんだよ。
他に選択肢なんて、いくらでもあったのに。
これの意味が分からない程、野暮なつもりはない」
「牧野教授・・・」
「よく言われたものだよ。
『研究ばかりの学者馬鹿』と。
今頃は馬鹿の世話から解放され、清々していることだろう」
真衣は�牋磴Ν瓩噺世い燭�った。
根拠なんて無い。
だけど何より教授自身が、自分で出した答えに傷ついている気がしてならないのだ。
たとえ半端学生な真衣など及びもしない、偉い先生だったとしても。
「反証できそうかね」
「・・・・・・」
根拠の無い慰めなど、いい加減なレポートと同じ。
一応読むが、形だけ。
それが確かな実感だった。
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・
1日目の蔵書整理を終えると、夕方には自宅マンションに戻ることができた。
日没の時間も、最近は随分と遅くなった。
5月も末の現在。
19時近いのに外は薄暗い程度で、玄師のベランダで作業をするにも、ヘッドライトがいらないくらいだ。
連休に植え付けた、夏野菜の苗たちを改めて見てみる。
今年はトウモロコシのような大きくなる植物を植えなかったので、その分細々と種類を揃えたらしい。
真衣が昼間のルーフバルコニーで見かけた唐辛子に良く似た物があった。
「ねえ、米津さん。
これ唐辛子ですか？」
玄師が葉物野菜の収穫をしながら、眼鏡の目を細める。
「それはピーマン」
「ピーマンですか。
ほんとこの辺は見分けが付かないな・・・皆んな似てるから」
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作者名：井原 | 作成日時：2023年2月28日 3時
