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「採光は横の窓から」
「何育ててたんでしょうか。
葉物っぽく見えましたけど」
「サラダ菜とかブーケレタスとかかな。
現実に照らし合わせるとしたら。
実際、水耕栽培でよく作ってる野菜だしね」
腑に落ちた顔で頷いたら、玄師が小さく笑う。
「・・・何です？」
「いや、何か真衣も結構毒されてきたなと。
そういうのが気になるんだ」
自分で『毒』と言ってしまうのか。
真衣が映画の一場面でも、この手の栽培ネタに引っかかるようになってしまったのは、全て玄師のせいなのだ。
食べられる物しか育てないと豪語する、ベランダ園芸ヲタク。
そういう彼が何をしているかといえば、お湯を沸かしていた。
シンクからガス台へと、水がたっぷり入った鍋が移動する。
この家で1番大きなパスタ用の寸胴鍋が、火にかけられた。
さて、ここで問題です。
休日に彼氏のお宅でまったりしていたら、彼が大鍋でお湯を沸かし始めました。
何が始まるのでしょうか。
「お昼のパスタでも茹でるんですか？」
「いや、違う」
残念、違うそうだ。
「じゃあ、うどん？
ラーメン？」
「どれも違う」
大変です、違うそうです。
「じゃあ、何を茹でるんですか」
「強いて言うなら・・・土」
そうですか美味しそうですねーーって、何言っちゃってるんですか、この人！
真衣が口をあんぐりと開けていると、玄師はキッチンを出て行く。
真衣も慌てて、その背中を追いかけた。
向かった先は、この部屋のベランダだ。
南向きの大きなベランダは、鉢やプランターでいっぱいである。
植えてあるのは、全て野菜やハーブ、果物などの食べられる植物だ。
スーパーが開いている時間に帰宅出来ないのなら、家のベランダに畑を作れば即解決。
そんなおかしな発想から始まったベランダ菜園は、玄師が会社を辞めた今でも続行中だ。
「この間まで、ベビーリーフを植えたプランターがある。
アレは根の張りも浅かったし、使える部分も多そうだし。また使おうと思って」
「また使うって・・・プランターの土をですか？」
「そう、再生させる」
確かに玄師の言うプランターは、既に収穫を終えて、カラカラに乾いた土が半分程入った状態で放置されていた。
「まずこうやって、残った土をよく掘り返す。
で、抜きそびれた根とかゴミとか、こういう蛹なんかを取り除く」
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作者名：井原 | 作成日時：2023年2月28日 3時
