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ーーえらいものを観てしまった。
久里坂真衣は、エンドロール流れる大画面テレビの前で、やや途方に暮れた。
ここは米津玄師の部屋のリビングで、視聴していたのは動画配信サービスで提供されている洋画。
オシャレ映画好きの美菜都ちゃんも、アクション好きの古沼くんも、2人揃って『観ろ観ろ』ってずっと言ってた。
それに加え玄師まで『実は映画館で爆音上映をキメた』と告白されては、1回くらい観なあかんと思ったのだ。
で、観てみた。
確かに凄かった、とても面白かった。
しかしあまりにハード過ぎて、プリキュアの余韻冷めやらぬ日曜日の午前中から視聴する物ではなかった。
真衣は首をひねりながら、ヘッドホンを外して立ち上がる。
窓の外は、麗らかな快晴。
4月最後の日曜日は、別名�爛粥璽襯妊鵐Ε�ーク�瓩箸盡討个譴討い襦�
絶望の世紀末で爆発と粉塵に塗れていた画面とのギャップが激し過ぎて、ハレーションを起こしそうだ。
「米津さーん・・・」
真衣はのろのろと家主の名を呼ぶ。
在宅デザイナーの玄師だが、こうして真衣が1人で勝手に暇を潰す分には、五月蝿いことを言わなくなった。
多分それが、付き合い初めて半年以上過ぎた真衣が手に入れた、立ち位置なのだろう。
問題の玄師は、キッチンで鍋に水を入れていた。
まず特徴として、背の高い男だ。
面長の顔はシャープに整っている。
誇張ではなく、男前と言って良いと思う。
これで着ている物が、部屋着の3本ライン入り黒ジャージなものだから、全身真っ黒。
1人で台所に立たれてしまうと、結構な威圧感だ。
真衣はめげずにキッチンに踏み込むと、その背の高い黒服男の二の腕に、ゴツンと額をぶつけてみる。
「観ましたよー、映画」
「1、2、3、4のどれ」
「1番新しいやつ」
「なら4だ」
玄師は蛇口の水を止め、どうだったかと感想を尋ねてきた。
「んー・・・面白いには面白かったです。
アクション凄かったし、デザインとか凝ってて。
あと、砦にあった野菜育てる部屋」
真衣が悪の親玉の砦にあった水耕栽培システムを言い出すと、玄師の無骨な黒縁眼鏡がキラっと光る。
「上からプランターを、縦に何個もぶら下げてましたよね。
水は霧吹きみたいにして」
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作者名：井原 | 作成日時：2023年2月28日 3時
