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しかし無関係だと言い切るには、今の真衣は少し鶴丸の事情に踏み込み過ぎている。
鶴丸の部屋の物置で目にした何枚かの絵を、真衣は思い出す。
あれは鶴丸ではなく、紗代子が描いた物だったのだろうか。
そんなことを暫く考えて炎天下に立っていると、うっかり熱中症で倒れそうだ。
真衣は軽く首を振り、歩道から道路脇に視線を移す。
児童公園の側を走るのは、片側一車線の一般道だった
昼間のせいか車はあまり通らない。
しかし街道への抜け道になっているのか、時折思い出したように、トラックが速度を上げて行き過ぎる。
道路脇には何もなかった。
目印になる物も、真衣の母が欠かさなかったような献花も。
けれど何も置かれていないからといって、何も起こらなかったわけではない。
花が無いからといって、誰も悲しんでいないわけではないのだ。
午後の道沿いに、歩いている人影は無かった。
車も今は途切れている。
目を閉じかけると、チラッと何かが足元をよぎった気がした。
それが猫だったように思えて、真衣はハッと瞼を開ける。
「あ・・・っ！」
思わず声が漏れた。
日差しに白く焼けたアスファルトの上を、サッと猫の黒い影が渡り、公園に飛び込んだのが見えたのだ。
「嘘、ちょっと・・・！」
呼びかけたところで猫が振り向くはずもない。
真衣はあたふたと猫の後を追って駆け出した。
狭い児童公園には、ブランコと鉄棒とほんの少しの遊具があるだけで、遊んでいる子供1人いない。
猫の姿を探して視線を巡らせると、ブランコの側の植え込みに猫が蹲っているのを見つけた。
ドキドキする心臓の音を宥めつつ、足音を殺してそっと近づく。
植え込みの陰になっているせいか、猫の目の色は分からなかった。
脅かさないよう、植え込みの側までそろそろと歩み寄ったところで、蹲っていた猫はサッと逃げ去ってしまう。
遠ざかる猫の毛並みを確かめた瞬間、真衣はその場に力尽きそうになった。
「なんだ、トラ猫じゃん・・・！」
黒かと思ったが、よく見たら黒に近い焦茶のトラだった。
このクソ暑い最中に一体自分は何をやっているのかと思った途端、汗と疲労が噴き出してくる。
バイトに行く前にこんな消耗してどうするんだろう。
真衣が肩を落としていると、ふいにクスクスという笑い声が聞こえた。
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作者名：真 | 作成日時：2023年2月1日 21時
