眠れぬ夜のセレナーデ〜3〜 (ページ37)

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けれど今はそれで良いと、真衣は思った。

奇跡や魔法でなくて良い。

まぐれでも、偶然でも良い。

鶴丸が今、細やかな眠りを手に入れることが出来たところで、何の救いにもならないのかもしれない。

本当は、何ひとつ変わっていないのかもしれない。

それでも長い夜に僅かな微睡が訪れるように、鶴丸にも変化があったなら、真衣のしたことは無駄ではない。

・・・少しだけ、報われる。

真衣は鶴丸の肩に自分の額を押し付けた。

僅かに戸惑ったような気配の後で、鶴丸の声が耳元を掠める。

「真衣？」

彼の声を聞きながら、真衣は瞼を閉じた。

驚きが去ってみると、心地良い眠気が戻ってくる。

それは強いものではなく、軽く肩に触れるだけで目が覚めるような、うたた寝を呼ぶ眠気だった。

僅かな眠りを手に入れても、きっと鶴丸はあの店を続けるのだろう。

長い夜を1人で過ごす、誰かのために。

根拠もなく、そんなことを考えて真衣は微笑む。

居心地の良いあの店が開く前に、鶴丸の側で、もう少しだけ眠りたかった。

ーーfine.