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喉の痛みを堪えながら真衣は言った。
まだ心臓がドクドクしている。
警察を呼ばれやしないかと心配になっていると、不機嫌そうに鶴丸が答えた。
「生き返るも何も、そもそも死んでない。
うとうとしてただけだ」
「でも、熱とかあるんじゃない？」
てっきり例の発作を起こしたのかと思ったのだが、鶴丸の顔色はいつも通りだ。
試しに彼の顔に触れてみるが、確かに熱くない。
良かったと息を吐いた真衣は、次の瞬間、愕然として鶴丸に向き直った。
「ちょっと待って。
今『うとうとした』って・・・！」
少し眠たげに前髪を掻き上げた鶴丸は、真衣の発言に動きを止める。
自分でも口にした言葉が信じられないのだろう。
暫く目を見張って固まっていたが、やがて確認するように視線を巡らせた。
「店の準備から戻ってきたら、妙に体が怠くなったんで、ここに座って休んでたんだが・・・少し寝入っていたらしいな。
大方10分かそこらだと思うが」
鶴丸は時計を確認する。
「でも・・・何で？」
自力で睡眠を取れなくなり、度々発作を起こしていた鶴丸が眠れるようになるなんて。
どろぼう猫は見つけたが、結局捕まえ損なったというのに、何かきっかけがあったのか。
それとも真衣が寝入っている間に、何か奇跡でも起きたのだろうか。
真衣が考え込んでいると、鶴丸は事もなげに言った。
「理由なら分かる」
「え？」
「さっき帰ってきたらキミがまだ寝てたから、夜は冷えるかと思って、布団の代わりにスプリングコートを掛けたんだ。
あんまり気持ち良さそうに寝てるんで、眺めてるうちにこっちまで眠くなってきた」
鶴丸の答えを聞いて、真衣は絶句する。
「え、それだけ！？
てか、何で布団の代わりにコート・・・」
「眠らなくなってから、ベットも処分したからな。
掛け布団はウチにない。
ダウンより良いかと思って」
気持ちは有難いが、今は夏だ。
どうせ掛けるなら、タオルケットなどにしてほしかった。
それにしても、鶴丸に寝顔を見られていたと思うと、何だか気まずい。
涎なんか垂らしてなかったろうかと、真衣はさりげなく顔を擦った。
「でも、そんな簡単に眠れるようになるなんて、おかしいよ。
どろぼう猫に会ったことと関係あるのかな」
真衣は黒猫に遭遇した時の記憶を辿る。
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作者名：真 | 作成日時：2023年2月1日 21時
