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ブロック塀の上に蹲ってこちらを見ていたかと思うと、駐車場に何匹か固まって座り、猫の集会をしていたりする。
会う猫は皆、ブチや白や三毛やトラで黒猫は1匹もいなかったが、そんな猫たちを眺めながら歩くのは楽しかった。
ある路地に迷い込んだ時には、道の真ん中に子猫数匹が団子のように固まって眠っていて、度肝を抜かれた。
「こんな所で寝てて、人に踏まれたりしないかな」
そっと真衣が尋ねると、鶴丸は真面目な顔で答える。
「というより、車の方が危険だろう」
言われてみれば、もうじき新聞配達のバイクが通りかかる時間帯だ。
真衣はそっと近づいて起こそうとしたが、子猫たちはぐっすり寝入って目を覚さない。
「ま、いいや。
ちょっと撫でさせてもらおう」
団子になって寝ている猫の側にしゃがみ込み、真衣は手を伸ばす。
眠っているのは三毛とブチとキジトラだ。
まだ柔らかなふわふわの毛を指の前でちょいちょいと撫でると、鶴丸は少し羨ましそうな顔をした。
鶴丸さんも撫でれば良いのにーーと言おうとしたところで三毛が目を覚まし、ギョッとしたように駆け去って行く。
続いてブチも泡を食ったように逃げて行ったが、キジトラは逞しく眠っていた。
「・・・死んでるんじゃないだろうな」
心配になったのか、鶴丸がちょんと指先で頭に触れると、キジトラは弾かれたように兄弟のいる方へ姿を消す。
どこか名残惜しそうな鶴丸を見て真衣が笑うと、彼は気まずそうに横を向いた。
黙って歩いていると眠気が押し寄せて、そのうちさっきの猫の兄弟みたいに道の真ん中で寝てしまいそうだった。
だから真衣は思い付く限り、色んなことを話した。
「でね。
その先輩、私たちが話しかけても碌に口もきかないくせに、真由香がいる時は別人みたいに喋るの。
そのくせ真由香はその先輩のこと怖いって言うし、先輩も自分が態度違うって全然気づいてないんだよ。
傍から見てると、どっちも意識してるの丸分かりなのに」
真衣が友人の話をすれば、鶴丸は律儀に相槌を返す。
「当事者ほど、分からないもんなんだろうな」
入り組んだ路地を歩いている時には、鶴丸がふと立ち止まり、こんな話をした。
「うちに来た客に聞いたんだが、この辺りに深夜だけ見つかる細い路地があるらしい。
そこにうっかり迷い込むと、閉じ込められて2度と出て来られないんだそうだ」
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作者名：真 | 作成日時：2023年2月1日 21時
