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そんなことは初めから分かっている。
「やっぱ、無理か」
口に出すと、一緒に気力も抜け落ちた。
脱力感に逆らわず、真衣は手摺を支柱に背中を預けると、その場にペタンと座り込む。
「大丈夫か？」
突然座り込んだ真衣に、鶴丸が心配そうに膝をつき尋ねてくる。
「ごめんね」
項垂れたまま、真衣は言った。
「別に、鶴丸さんに同情して始めたわけじゃないんだ。
私にどうにかできる問題じゃないって分かってるし。
・・・でも」
『このままじゃ、あんまりじゃねぇか』と言った茂之のしゃがれ声が頭の中で響く。
「何かしたかっただけ。
何もできないって思いたくなかった。
死んじゃった人じゃなくて、生きてる人のこと・・・私のことも、見てほしかっただけなんだよ」
毎日兄の事故現場に�爐�参り�瓩帽圓�母も、生きている真衣を見ようとしなかった。
いつまでも過去の・・・もう何処にもいない人に囚われたままだ。
それ程大切だったことは知っている。
けれど自己満足でも、無駄な努力でも、そんなのはもう終わりにしたかった。
真衣はただ、悪あがきすることで自分を見てほしかっただけなのだ。
俯いている真衣の頭に、鶴丸の手が触れる。
「もういい」
次の瞬間、鶴丸の中に抱え込まれながら、彼の胸に頭を押し付けられた。
視界が塞がれたせいで、押さえ込んでいた睡魔が襲い掛かり、波が引くように一瞬意識が遠のく。
鶴丸の言う通り、このまま睡魔に身を任せたくなった。
それでも真衣は抵抗して身を捩り、鶴丸の胸板に手をついて顔を上げる。
「分かった。
ちゃんと寝るから、その前に少しだけ散歩に行こう」
「散歩？」
「これで最後。
今夜で終わりにするから。
良いでしょう？」
鶴丸は少し考える顔をしたが『これで最後』という真衣の言葉に納得したのか、ようやく頷いた。
「分かった」
そうして、2人は最後の猫探しに出掛けることになったのだ。
・
・
深夜の住宅街は水の底のように静かだった。
夏の夜明けにはまだ早く、誰も歩いていない道を真衣と鶴丸は並んで歩く。
不思議と、猫にはよく会った。
昨夜港川と歩いた時は1、2匹見かけた程度だったのに、今夜はやたらと目についた。
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作者名：真 | 作成日時：2023年2月1日 21時
