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1人で夜の街に繰り出すなんてこともなく、大人しく家で過ごそうとした。
しかし、じっとしているとうっかり寝入ってしまいそうになったのだ。
真衣はこれこそチャンスと、猫を探しに行くことにした。
真衣の夜の散歩に付き合ってくれたのは、医師の港川だ。
紗代子は港川の妹でもあるし、どろぼう猫は自分にとっても仇みたいなものだと言っていた。
鶴丸には止められたが、港川には一応相談しておくべきかと思ったのである。
山尾夫人から聞いた紗代子の話を伝え、真衣が眠りを断っていることを打ち明けると、港川は良い返事をしなかった。
「紗代子が猫を懐かせることが出来たのが、本当に眠りを断ったからなのか、裏付けがあるわけではないでしょう。
健康を害するような方法を真衣さんに取らせるのは、僕としても賛成出来ません」
それは最もな意見だったが、真衣としては引き下がるつもりはなかった。
�犖朕妖�な実験で、無理はしない�瓩般鸞�すると、夜の猫探しには自分が付き添うという条件で、渋々承諾してくれたのだ。
約束の時間通りに現れた港川は、こんな時でさえスーツにネクタイ姿で、何だか笑ってしまった。
本人が1番落ち着く格好というから仕方ない。
「父は、あれで脆いところがありますからね。
紗代子が心のバランスを崩した時も『片親で苦労させたせいかもしれない』って、自分を責めてましたし」
真衣が先程店で茂之と話したと聞くと、港川は懐中電灯を手にそう言った。
「国永は自分が紗代子を死なせたと思っているみたいですが、それを言うなら、僕や父の方が余程責任があるんです。
特に僕は、精神科医のくせに、妹の苦しみを救ってやれなかったんですから」
港川の声は静かだったが、チラリと見上げたその顔は酷く哀しげだ。
「医者の看板を下ろすことも考えましたが、国永の体のことでそうも言ってられなくなり、今もこうして続けてる。
彼が自力で眠れる方法も分からないっていうのにね」
眠りを失った当初、大学病院で検査を受けた鶴丸だったが、今は港川の治療以外は受ける気がないらしい。
それは友人を信頼しているからーーというより、治療自体にあまり積極的ではないせいだと港川は言う。
「国永の心を軽くするには、僕や父では紗代子にあまりに近過ぎる。
だから父も、真衣さんにそんなことを言ったんでしょう。
でも・・・」
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作者名：真 | 作成日時：2023年2月1日 21時
