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昼も夜もないような紗代子の日常に合わせていた鶴丸は、日々消耗を強いられていた。
しかし、彼女から離れようとは思わなかった。
けれど春先のある日、それは起きた。
いつになく疲れが溜まっていた鶴丸は、深夜まで紗代子の話に付き合ううちに、いつの間にか眠り込んでいた。
目を覚ますと夜は明けており、部屋に紗代子の姿が無いことに気付く。
鶴丸が紗代子を探しに飛び出し、その姿を見つけた時には、もう全てが手遅れだった。
感情を交えない声で彼は話し終えると、自分を裁くように冷ややかに言う。
「絶対に眠っちゃならない時に、俺は寝入って使い物にならなかったんだ。
この先一生安眠できなくたって、文句は言えない」
小刻みに震える手をカウンターの下で握り込み、真衣は俯く。
「そんなの・・・」
�狡甦櫃里擦い任呂覆き瓩噺�にするには、起きた出来事はあまりに重過ぎた。
以前、真衣の母の話を聞いて『他人事に思えなかった』と鶴丸が言ったことがある。
あれは大切な人が忘れられないからではなく�犲�分のせいで大切な人を死なせた事�瓩�同じだと感じていたからだろうか。
そんなことを考えていると、鶴丸はポツリと続けた。
「実際、紗代子が死んだのが、純粋な事故だったかは今も分からないしな」
「え？」
「彼女がもし、猫を助けようとしたんじゃなくて・・・自分から車の前に飛び込んだとしたら。
俺は二重の意味で彼女を救えなかったことになる」
その言葉を聞いて、鶴丸がどろぼう猫を探している訳がやっと分かった。
仇を取るためでも、奪われた眠りを取り戻すためでもない。
彼はただ、婚約者の最期がどんなものであったか、確かめようとしているだけなのだ。
固まっている真衣を申し訳なさそうに見下ろし、鶴丸は目を細める。
「分かっただろ？
俺なんかのために、キミがそこまでする必要はないんだ。
申し出は有り難いけど、気持ちだけ貰っとくよ」
鶴丸は優しかったが、これ以上は踏み込むなという断固とした拒絶に思えて、真衣は何も答えることが出来なかった。
・
・
「目の下。
クマができてるぜ、お嬢ちゃん」
煙草をふかしながら茂之に指摘され、真衣は目元を擦る。
「え？
あ、そう。
マスカラが落ちたかな」
「マスカラってか、死相が出てる感じなんだが。
大丈夫か？」
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作者名：真 | 作成日時：2023年2月1日 21時
