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どこにも行かずに、部屋にいるのが1番楽だ。
息子はテレビで聞き覚えた言葉を盛んに話すが、いちいち返事をしていたら神経が保たない。
真衣は最近、息子のトイレトレーニングをやめた。
「ちっち」と言った時には、既に漏らしていたことが何度かあった。
時計を見計らってトイレに連れて行っても「でない」と言い張る。
振り回され、他人の子と比べて鬱々とするのが嫌になった。
放っておいても、オムツなどいつか取れるだろう。
息子はなんとか1人で食事できるようになったし、簡単な服なら、少し手伝えば着替えられる。
その点では手がかからなくて良かったと思うが、真衣が何かできるほどの時間が空くわけでもない。
たとえ空いたとしても、したいことも無かった。
今更働くのは馬鹿らしいし、習いたい稽古事もない。
夫と2人だけの生活は、結婚半年で飽きた。
1度の流産と、その後誠を妊娠している間は、体の変化を受け入れるのに必死で瞬く間に過ぎた。
誠を生んで始めた子育てには、早くも飽きつつある。
飽きても息子は消えない。
緩やかに時間ばかりが積み重なっていく。
これから何十年も息子に振り回され、夫と夫婦として暮らしていくのかと思うと、時々真衣は叫びたくなる。
ではどうしたいのかと問われても、具体的な展望はない。
日がな家にいるだけで食べ逸れることもない生活は楽だから、積み重なる時間の中でじっと黙っている。
夫の両親は孫のために、おもちゃやお菓子を沢山送ってくる。
適当に与えておけば勝手に遊ぶので、息子が遊んでいる間、真衣は部屋の掃除をしたり野菜を切ったりする。
キッチンの窓からは、ビルの狭間に小さくスカイツリーが見えた。
金曜の夜9時過ぎに、夫から電話があった。
「今から友達を連れて帰る」
「そんな、急に困るよ。
何にもないし」
「飯はもう食ったし、べつに放っておいてくれて良いから。
どうせ斎藤だし。
ほら、この前水族館で会ったろ？」
真衣は電話を切ると、急いでパジャマから部屋着に着替えた。
しかし少し考え�爛薀佞任呂△襪�外出着�瓩砲發�1度着替える。
あとは寝るだけとなっていた息子に「パパがお客様を連れて来るんだって。良い子にしててね」と言い聞かせ、洗面所で薄く化粧をした。
息子は「うん」と言い、リビングでおとなしくテレビを観た。
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作者名：真 | 作成日時：2022年11月16日 21時
