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最初から蚊帳の外だと真衣は思った。
誰が？
夫か、一か、それとも私か。
もしかしたら全員かもしれない。
立派に塗装された箱の周囲を、中に入りたがってグルグル回っているだけなのかもしれない。
箱は紙でできていて、中身は空洞なのに、眺めるばかりでいる。
だから、そのことに気付けない。
夫は寝室について来た。
ドアの鍵を閉めた時、真衣は夫と顔を見合わせて静かに笑う。
リビングからはアニメの劇中歌に合わせ、息子が楽しげに歌う声がした。
「どんなことをされたの？」と真衣が聞くと「そりゃまあ、えげつないことを色々」と夫は言った。
「同じようにしてもいいわよ」と言ったのに、夫は優しく真衣を抱いた。
こういうものなんだろうか、と真衣は思った。
男なんてこういうものか、と。
ーー外面ばっかり良くて、嫌な人。
ーー昔からそうだよ。上級生には可愛がられて、後輩には嫌われるタイプ。要領だけで世の中を渡ってるから、いざって時に気が弱い。
ーーねえ、どんなことされたか教えて。
ーー今そういうこと思い出すと萎えるから、言わない。
夫を話題に、2人でしつこく盛り上がった。
お互いを激しく求め合った。
馬鹿みたいに、汗に濡れた額を寄せてクスクス笑った。
事が終わりリビングを覗くと、息子はソファーで眠っていた。
普段から構いつけてなくてよかった。
ローテーブルに出しっぱなしだった煙草を掴む。
テレビを消し、キッチンから灰皿とミネラルウォーターのボトルを持って、また寝室に戻る。
一はベッドに身を伸ばして目を閉じていたが、眠っていたわけではないようだ。
真衣が煙草の吸い口で軽く唇を突くと、そこはすぐに薄く開いた。
一は煙草を咥えて起き上がり、ライターで火を点ける。
ボトルに半分ほど残っていたミネラルウォーターを交互に飲んだ。
「それでアンタはどうすんの。
いい加減な旦那に、早く見切りをつけた方が良いんじゃない」と一は聞いた。
「どうもしない」と真衣が言うと、一はボトルを床に放り投げる。
「俺はな、アンタみたいな女が1番嫌いだ」
その時の噛み付くようなキスが、一が取ったただ1つの乱暴と言えるかもしれない行動だった。
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作者名：真 | 作成日時：2022年11月16日 21時
