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「どっか痛いのか？
草太のヤツに何か言われたか？」
俺が必死に宥めても、鈴芽は俯いて身を震わせている。
俺は鈴芽の膝に両手を置き、伸び上がってそっと涙を舐めた。
途方に暮れている鈴芽の心が凝縮した、しょっぱい味がする。
「どうしよう。
どう答えたら良いだろう」
鈴芽は呟く。
「泣くなよ鈴芽。
俺がいるじゃないか、な？」
鈴芽の両腕が、ギュッと俺の背に回される。
抱き締められて、俺も鈴芽の首筋に頬を擦り寄せた。
ほら、鈴芽。
こうやれば、温もってくるだろう。
泣くことなんかないんだ。
俺が側にいる。
俺はいつだって鈴芽のことを考えてるし、思っている。
だから笑ってくれよ。
鈴芽の心臓は、俺より緩やかに鼓動を刻む。
命の速度が違うからだ。
俺は切ない。
そして悲しい。
鈴芽の悲しみを感じるのに、できることはあまりに少ない。
草太め。
鈴芽に何を質問したから知らんが、今度家に来たら、俺がぎったんぎったんのめためたにしてやる。
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その日、俺は朝から調子が悪かった。
何だかムカムカするし、腹が痛い。
風邪かな。
まあ、寝てれば治るだろう。
児童公園で静かに泣いた鈴芽は、翌朝にはいつも通りだった。
元気に仕事し、1人で笑ったり怒ったり騒がしい。
チェストから環さんの写真を取り出して眺めたり、偶にどこかに電話しようとしては溜息を吐いて止める。
それを俺は知っていた。
うーむ。
やっぱり今は寝てる場合じゃないぞ。
俺のチャームで、鈴芽の心を少しでも和らげなくては。
そう思うのだが、体は言うことをきかない。
腹の中が、嵐みたいに荒れ狂っている。
今日は鈴芽の働いている病院が休みだ。
だから、鈴芽は1日中家にいる。
昼飯を食いに1階へ降りてきた鈴芽が、リビングでへばっている俺を見て「どうしたの真衣！」と叫んだ。
鈴芽に心配かけちゃいけない。
「どうもねえよ」と起きようとしたが、足元がふらついて駄目だった。
鈴芽が駆け寄ってきて、俺の体をあちこち触る。
「苦しいの？
どこがどう痛い？」
「腹がちょっと・・・」
「獣医さんに行かなきゃ！」
鈴芽は毛布でお願いを包み、抱き上げようとした。
やめろ鈴芽、あそこは嫌いだ！
それにどうやって医者の所まで行くつもりだ？
鈴芽、車持ってないだろ。
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作者名：井原 | 作成日時：2022年12月22日 23時
