すーずめ！ (ページ5)

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こういう状態の鈴芽に逆らっちゃいけない。

まあいいや。

もう夜もかなり暖かくなってきたし、一先ず玄関に避難しよう。

そう思って場所を移したら、鈴芽が追うようにやって来て、今度は玄関も磨き立てる。

その辺りで、ようやく俺もピンときた。

草太だ。

草太が来やがるのだ、忌々しい。

あんなヤツ、この家の敷居を跨げるだけでも随喜の涙を流して五体投地しろって感じなのに。

掃除までして出迎えることなんかないんだ。

俺はむっつり黙り込んで鈴芽を見ていた。

玄関を綺麗にし、トイレ掃除に移行した鈴芽は、俺の不機嫌オーラにも気付かず言う。

「ねえ真衣。
明日の夕方、草太さんが来るの」

「あっそ、ふうん」

「『夕飯作るから一緒に食べよう』って言っちゃってさ」

「何でそんなこと言うんだよ！
鈴芽、アイツに弱みでも握られてんのか？」

そうだとしても、安心して良いぞ鈴芽。

草太なんざ、俺がその気になりゃ、一撃でお陀仏にできるからな。

「どうしよう、まだ買い出しにも行ってないよ」

「カップラーメンでも食わせとけば」

鈴芽はぶつぶつ言い、トイレブラシを片手に勢い良く俺を振り返る。

「真衣！」

「何だよ」

「明日草太さんが来たら、少しお相手してて」

「何で俺が。
嫌だよ」

「明日帰ってから夕飯作るから。
その間、何とか時間を稼いで」

「ちょっと鈴芽！」

「頼んだからね」

鈴芽はもう、俺の話を聞いちゃいなかった。

目に触れる場所の掃除を終わらせ、さっさと2階へ上がって行く。

あまりにも残酷じゃないか。

細かいことを気にしない大らかさは鈴芽の美点の1つだが、無神経にも程がある。

俺は草太と同じ空気を吸うだけで、ちょっと腹の具合が悪くなる程だってのに。

そんなこんなで夜が明けた。

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「いらっしゃい、草太さん」

17時頃にやって来た草太は、鈴芽に笑顔で応対されていた。

鈴芽は病院から帰ってきて慌ててシャワーに入り、化粧を直したから、凄く綺麗だ。

「ちょっと早く来すぎたかな」と草太が言った。

「まったくだ。ていうか、来んな」と俺は返した。

「ううん、全然大丈夫。
だけどごめん。
ちょっとだけ待ってて。
まだ料理中なんだ」

「忙しいなら出直すけど・・・」

草太は心配そうに鈴芽を見る。