すーずめ！ (ページ4)

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だから鈴芽が「ここにずっといる？」と、さりげなく尋ねてくれた時、俺はとっても嬉しかったんだ。

「そうだな。
そうしようかな」

「じゃあ、名前が必要だね」

「鈴芽が好きなように呼んでくれ」

「うーん」

鈴芽は少し考え「〝真衣〟っていうのはどう？」と言った。

「悪くない」と俺は答えた。

ホントはその名前を凄く気に入ったんだけど『悪くない』なんて答えちゃったんだ。

俺もあの頃はまだ青かったよな。

「綺麗だね」

庭を見ながら鈴芽が言った。

「綺麗だなあ」

俺は鈴芽の横顔を見ながら言った。

惚れ惚れするぜ、鈴芽。

2年経っても見飽きないどころか、どんどん綺麗だと思うことが増えた。

なんだって、鈴芽がしたいようにすれば良いさ。

あ、パイプカットはごめん被りたいけど。

それ以外は、何でも鈴芽の思う通りにすれば良い。

他の男を家に呼ぶのも、俺が別の女の子と仲良くするのを怒るのも、全て鈴芽の思いのままだ。

何度でも俺を裏切り、試すと良い。

何をされたって、俺が鈴芽を好きなことは変わらないんだから。

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鈴芽は看護師として働いていて、家では看病の勉強をしている。

だからその間、俺も気を遣って大人しくしている。

鈴芽は集中すると、何時間も机の前にいる。

でも夕方には必ず作業を中断し、俺と町内をブラブラ散歩してから飯を食う。

「俺のことは放っておいて良いんだぜ」と言っても「あんまり時間が取れなくて悪いけど、ご飯くらいは一緒に食べようね」と笑う。

なんて良くできた娘なんだ。

ホント、俺は果報者だ。

食事を終えた後、鈴芽はハッとしながら俺に尋ねた。

「どうしよう！
真衣、今日何曜日だっけ？」

「えー？」

俺はそろそろ寝床に入ろうかなと思っていたから、あんまり頭が回っていない。

「金曜日だろ」

「ぎゃー、金曜日！
ということは明日は土曜。
どうしよう！」

鈴芽は大急ぎでリビングの掃除を始めた。

俺を追い立てて、夜なのに掃除機をかける。

俺は掃除機の音が苦手だ。

雷に似ていて、聞いていると震えがくる。

その時も毛布を被ってしまいたかったが、鈴芽にカッコ悪い姿を見せたくないから、我慢した。

「おい、近所迷惑だろ」と言っても鈴芽は耳を貸さず「間に合わない、間に合わない」と念仏みたいに呟いて、鬼気迫る形相だ。