すーずめ！ (ページ13)

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「分かった、トイレだね。
まだ腹が痛いのか？
鈴芽さんを呼ぼう」

「ちがーう！」

なんという救い難いアホだろう。

俺は威厳をもって床に座り、草太を正面から睨み据えた。

「治ったのかい」

「いいや、治らないねえ。
どういうことなのか、じっくり聞かせてもらおう」

ドスをきかせてそう言うと、草太は1つ息を吐き、もそもそ脚を組み替えて正座した。

「・・・正直言うとね。
鈴芽さんからは、まだ返事をもらえていないんだ。
俺が急に言い出したものだから、悩ませちゃったみたい」

「鈴芽は、どうやって穏便に断ろうかと悩んでるんだろ。
察しろよ」

「俺は、いつまでも待つつもりだ」

「迷惑だ」

「鈴芽さん以外考えられない。
今日、キミのことで凄く必死になってる鈴芽さんを見て、ますますそう感じた。
・・・鈴芽さんは、キミ以外の家族は欲しくないと言っていたけどね。
ご両親を早くに亡くされたせいかな」

俺への愛が大きいからだと思うがな。

だけど、そうか・・・そんな風に鈴芽は思ってるのか。

馬鹿だな、鈴芽。

失くすのを怖がって、何も持たずにいるなんてさ。

臆病な子供みたいだ。

ま、勿論そこも可愛いんだけど。

「でも俺は、そういう鈴芽さんと一緒にいたい」

草太は1人で決意を固めている。

「年を取って、お互い長生きして、最期は『幸せだったね』って言い合えるような毎日を、一緒に送りたいんだ」

俺はやれやれと首を振った。

「本気なんだよ、真衣。
だからキミにも言っておこうと思って。
許してくれるだろう？
俺と鈴芽さんが結婚するのを」

寝ぼけてんのか！

許すわけないだろ、このやろう！！

俺は草太に飛び掛かった。

「うわ、なんだい真衣」

草太は俺を腹に乗せた格好で、後ろにひっくり返る。

台所から湯気の立つ器を持って戻ってきた鈴芽が「あ！真衣」と言った。

「もう、すっかり草太さんに懐いちゃって」

違うんだがなあ。

今度はストレスで腹が痛くなりそうだぜ。

でもま、鈴芽が嬉しそうにしているから、今夜は良しとしよう。

・

・

それから鈴芽と草太がどうなったかというと、別にどうもなっていない。

当たり前だ。

相変わらず、草太は家へやって来る。

前よりも尋ねて来る頻度がちょっと高くなったが、草太はガムという土産を持って来る。