すーずめ！ (ページ11)

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この家から歩いて行けないぞ。

「大丈夫だから、無理すんな」

俺は身を捩って鈴芽の腕から逃れた。

なおも俺を持ち上げようと奮闘する鈴芽の手を、ちょっと舐める。

「じっとしてれば、すぐ治る」

「真衣、真衣。
しっかりして」

鈴芽は半べそをかいて、俺の体をさする。

俺ってば、鈴芽に凄く愛されてるな。

ああ、幸せだ。

「今なら、笑って死ねる自信があるぜ・・・」

重い瞼をなんとか片方だけこじ開け、鈴芽に向かってそう言った。

ふっ、決まった。

鈴芽は俺に縋りつき「死んじゃ嫌だよ真衣」と、とうとう泣き出す。

いけない、いけない。

大事な鈴芽を泣かせてどうする。

しかし、腹の痛みが尋常じゃない。

もしや俺、本当にこのまま死ぬのか？

くそ。

悩みがある鈴芽を置いて、のんびり死んでる場合じゃないってのに。

玄関チャイムが鳴った。

間延びした音がリビングに響く。

あんまりしつこく何度も鳴るもんだから、鈴芽は「ちょっと待ってて、すぐ戻るから。動いちゃ駄目だよ」と言って、玄関に走って行った。

「はい、どなた！」

喧嘩腰の鈴芽の声が聞こえる。

そういう態度は良くないぞ、鈴芽。

回覧板を持ってきたお隣さんかもしれないじゃないか。

ご近所付き合いは大切にしないと・・・。

「草太さん！」

鈴芽は言った。

何、草太だと？

ええい、今更どの面下げて来やがったんだ。

俺は渾身の力を込めて立った。

追い返してやらねばならん。

鈴芽がドアを開けたらしく、草太の声も聞こえるようになった。

「突然ごめん。
あの俺・・・この前はちょっと急すぎたと思って」

「今はそれどころじゃないの！」

鈴芽は草太の言葉を途中で遮る。

「真衣が、真衣が・・・」

「真衣がどうかした？」

鈴芽と草太の足音が近づいてくる。

リビングの入り口で草太の侵入を断固阻止しようと思ったが、足が上手く動かない。

ついに立っていられなくなり、へなへなと横倒しになってしまった。

丁度それを目撃した鈴芽が、短い悲鳴を上げて俺の側に走り寄る。

「真衣！」

「動物病院に運ぼう。
外に車を停めてるから」

草太はテキパキと動いた。

俺を毛布で包み直し、楽々と両腕に抱える。