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俺と住んでるこの家に、だぞ？
俺の受けた衝撃を、ちょっとは慮ってもらいたい。
鈴芽が最初に男を連れ込んだ夜は、ショックのあまり、飯も喉を通らなかった。
翌朝には腹が減りまくったから、いつも通り食ったけど。
驚き呆れて物も言えない俺の前で、鈴芽はあの男と平気でイチャつくし。
あの男・・・なんて言ったっけ？
そうだ、宗像草太だ。
くそ、思い出すだけでムカつく。
鈴芽もあんな男のどこが良いんだ。
俺の方が足も速いし、タフだぞ！
まあ、ヤツの顔が良いのは認めるけど・・・。
とにかく草太のヤツも、もうちょっと遠慮ってもんを知るべきだ。
鈴芽には俺という男がいるのを知っていながら、何度も家に上がり込みやがって。
まあ、鈴芽は凄く良い女だからな。
誘われたら拒めないってのは、同じ男として分かるけれど。
それにしても図々しいだろ、草太！
2人してベッドに入っちゃって、俺はリビングで何回毛布を涙で濡らしたか分からない。
お願いだから、俺の心を試すのはやめてくれ。
何度そう叫んだか分からない。
俺の繊細なハートはズタボロだ。
でも今はもう、できるだけ黙認することにした。
鈴芽の1番はオレだと分かったからだ。
ざまあみろ、草太。
鈍感なお前は気付いていないようだが、鈴芽にとって、お前は所詮遊びにすぎない。
腹立たしいことに、草太が肌をツヤツヤさせて帰って行った朝、鈴芽が言ったのだ。
「そんなに怒らないで、真衣」と、鈴芽はリビングでふて寝していた俺をそっと抱き寄せた。
「真衣は私の中で、他の人と比べることなんて出来ない存在なんだから」
「ホントか」
比べようもない程、俺のこと大事か？」
「大好きだよ、真衣」
ああ、鈴芽！
俺もだ。
俺も鈴芽のことが大好きだ。
鈴芽が真に愛しているのは俺だけだと言うなら、それで良い。
俺は鈴芽のその言葉を信じるし、たまに鈴芽が毛色の変わった男をつまみ食いしたって、広い心で大目に見る。
だってしょうがないよな、愛してるんだもん。
愛してるから、何でも許しちゃうんだ。
俺って健気だ。
あ、また花びらが風に流れた。
庭の桜は満開だ。
「春なんだな」
俺は物憂いを振り払った。
今日は草太という邪魔者もいない。
鈴芽が部屋の掃除をしない時は、ヤツは来ないということだ。
せっかく鈴芽とべったり一緒にいられるのに、うだうだ考えてちゃ勿体ない。
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作者名：井原 | 作成日時：2022年12月22日 23時
